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追い詰められる地銀、7割が減益予想 「お達し」連発の政府に恨み節


31店舗で昼休業の継続を決めた関西みらい銀行の本店=大阪市中央区

 新型コロナウイルスの感染拡大が、地域経済を担う地銀の先行きに暗い影を落としている。令和3年3月期の業績は地銀の約7割が最終減益を予想。融資先の経営不安が拡大し、貸し倒れに備える引当金などの与信費用は「リーマン・ショック級」とされ、経営のマイナス要因になっている。地域金融機関として中小企業の資金繰り支援に励んできたものの、政府から矢継ぎ早に飛んでくる「お達し」に不満も漏れ伝わってきた。(岡本祐大) ■倒産1万件、与信費用急増  「この数字に自信があるかといわれると、ほんまの自信はない」。京都銀行の土井伸宏頭取は3年3月期で見込んだ与信費用についてため息交じりにこう説明した。  与信費用は多くの地銀の悩みの種だ。静岡銀行は約1・5倍の130億円、関西みらいフィナンシャルグループは傘下2行の合計が約2・6倍の125億円などと軒並み増加を見込む。  新型コロナの影響を業績予想に盛り込まなかった千葉銀行のような場合もあり、与信費用の見積もりを「正直分からない」と話す地銀幹部も珍しくない。未曾有の経済危機に、手探りで対応を進めざるを得ないのが実情だ。  新型コロナによる関連倒産は急増しており、帝国データバンクは今年の倒産件数について7年ぶりの1万超えを予想する。どの程度の貸し倒れが出るかは予測が難しく、多くの地銀が期中に業績予想を修正する可能性を示している。  ある日銀幹部は「不確実性があるなか、修正が行われても誰も責めることはできない」と理解を示す。  ■「コロナ前には戻せない」  こうした状況を受け、各地銀では店舗体制の改革を余儀なくされている。  なかでも、ある中堅地銀幹部が「もうコロナ前には戻せない」と指摘するのが、感染拡大防止を理由に導入した昼休業だ。  多くの地銀が「3密」を回避するため正午から午後1時ごろに1時間程度の休憩を取り入れた。新型コロナの感染が広がる前でも、郊外の利用者が少ない店舗では運営の効率化のため積極的に進めていたが、感染拡大に伴い一気に広がった格好だ。  終日窓口を開けておけば交代要員が必要になるだけに、一度昼休業を導入した店舗としては「経費削減を考えても元に戻すことはない」というわけだ。実際に関西みらい銀行は臨時期間が終わった6月1日以降も、コロナ前は昼休業をしていなかった31店舗で昼休業を継続している。  三菱UFJモルガン・スタンレー証券のまとめなどによれば、貸し出し利ざやの縮小や、保有する株式の運用不振で、約7割の上場地銀が3年3月期の業績予想で最終減益を見込んでいる。  このため、店舗網の見直しが加速するとの見立ても根強い。中小企業の顧客が多い地銀はこれまで、地域密着で店舗網を張り巡らせてきた。しかし店舗を維持するには、不動産を借りたり、行員を配置したりする負担が大きいため、すでに削減傾向にある。  「(通常は支店近くに居住する)支店長が自分で車を運転し、毎日1時間かけて通勤するケースも珍しくない」(地銀関係者)状況といい、すでに店舗削減の影響は出ているが、業績悪化を受けてさらに見直しが加速しそうな情勢だ。  ■政府の要求に振り回され  新型コロナの感染拡大後、地銀は地域経済の担い手として地元企業の資金繰り支援に奔走してきた。日銀によると、5月の地銀の貸出平均残高は前年同月比3・8%増の259兆6482億円で過去最高だった。  中堅地銀幹部は自ら得意先の融資相談に赴き、「火の手が強いところから優先順位を付けて消して回っているような状況」と自嘲気味に話す。「地銀も捨てたものじゃないな」と話す財務省幹部の冷めた評価とは対照的だ。  地銀幹部らは「今こそ存在価値を示すとき」と気合を入れるが、政府から相次ぐ要請に不満も出てきた。  4月の終わりには、大型連休期間中も店舗を開けて対応するよう求める麻生太郎財務相らの談話が発表。複数店舗を開けて対応した関西の地銀幹部は「外出自粛要請中にたくさんの人が来るわけがない」と戸惑いを隠さない。  また、5月27日には金融機関に貸し倒れリスクがない制度融資だけではなく、自前融資が減っていないかを点検する方針が示された。麻生財務相の談話には「手綱を緩めることなく」などと記されており、金融庁にくぎを刺さされた形だ。別の地銀トップは「ついこの前まで無利子無担保の制度融資をやれと大号令が出たばかりなのに」と不平をこぼす。  政府からの矢継ぎ早の要求に、地銀からは「金融機関が融資で守りに入るのは、それだけ(マイナス金利政策による構造不況で)金融機関が傷んでいるからだ」との恨み節も出ている。

産経新聞

 

 

一言コメント
地銀にとってはこれからが正念場!?


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