「経営は更に厳しく…」給食1日7万食、再び分散登校で業者ら悲嘆 北九州市立小中
- 企業・経済
- 2020年6月5日
小中学校の給食再開が延期となり原料の小麦粉が山積みになっているパン製造会社の倉庫=北九州市小倉南区の「ライオンズベーカリー」で2020年6月1日午後4時24分、浅野翔太郎撮影
13日連続で新型コロナウイルスの感染者が確認された北九州市で5日、市立小中学校が再び分散登校になる。本来なら1日に全面再開して給食も始まるはずだったが、18日までは分散登校が続き、全面再開に向けた見通しは立っていない。市立小中学校の給食は1日約7万食。先の見えない事態に、納入業者や調理員は途方に暮れている。 「3月の一斉臨時休校で給食が中止になった時より、今回の方がショックは大きい」。北九州市内の小中学校に1日1万4000食分のパンと米飯を納入するパン製造会社「ライオンズベーカリー」(小倉南区)の倉庫で、冨永英希常務(30)は山積みの小麦粉を前に表情を曇らせた。 同社は学校給食向けの売り上げが全体の約8割を占める。3月2日に一斉臨時休校が始まって給食もなくなってからは、病院や福祉施設の主食製造を細々と続けてきた。その間、約30人の従業員のうち配達員など10人以上を一時帰休に。冨永常務も「雇用調整助成金の手続きなどで書類を手に役所窓口を“スタンプラリー”する日々だった」。 5月、いったんは小中学校の6月1日全面再開と給食開始が決まった。会社の倉庫には久しぶりにパンの原料の小麦粉などが運び込まれ、従業員は「また頑張ろう」と意気込んだ。 しかし、5月23日からまた市内で新型コロナウイルスの感染確認が相次ぎ、小学校1校でクラスター(感染者集団)が発生したとみられるなど小中学校の児童生徒にも感染が広がった。29日夕、工場を念入りに清掃して帰路に就こうとしていた従業員らに開始見送りの知らせが入った。 「給食を楽しみにしていた子供たちや食事作りに追われる親御さんたちの顔が真っ先に浮かんだ」。冨永常務はそう気遣う。工場に積み上げられた小麦粉や米は日持ちするためしばらく保存できるが、操業できなければ売り上げにはつながらず「この事態が続けば経営は更に厳しくなる」。 市教委によると、市立小中学校の給食は1日約7万食。各校の給食室は給食再開に向けて調理器具の洗浄やグリーンピースなど冷凍食品の準備を進めていたが、再開中止が決まってからは一転、野菜の配送予定を止め、冷凍食品も業者に頭を下げて引き取ってもらうなど対応に追われた。 小倉南区の小学校の女性調理員(48)は「再開に向けてモチベーションが上がっていただけに残念です」とがっかり。給食室は大きな釜を並べて数百人分の料理を作るため、夏はサウナ状態の暑さになる。例年は春から徐々に体を慣らしていくため「いきなり暑い時期に始まると熱中症になる人もいるのではないか」と不安そうに話した。
一言コメント
量が多いだけに損失も大きい…
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