WHOが18日から総会 米中対立の構図 「新たな冷戦」に拍車
- 国際
- 2020年5月18日
【ロンドン=板東和正】世界保健機関(WHO)は18日から年次総会をテレビ会議方式で開催する。総会では、米国と中国が、台湾の総会へのオブザーバー参加や新型コロナウイルス対応の初動をめぐり、激しく対立する見通し。米中の緊張関係が一段と高まり、「新たな冷戦」に拍車がかかりそうだ。
年次総会は、当初の4日間の予定を2日間に短縮。WHO予算案の審議時間を削り、新型コロナ対策の協議に集中する方針で、WHOのテドロス事務局長は15日、「1948年のWHO設立以降、最も大事な総会の一つだ」と強調した。ただ、中国が反対する台湾のオブザーバー参加の可否や、WHOや中国のこれまでの新型コロナ対応の評価も協議するとみられる。
米メディアなどによると、総会では米国などが主張する台湾の参加について投票が行われる可能性がある。投票が実施されれば、参加には加盟国の過半数が必要という。米議会の超党派諮問機関「米中経済安全保障調査委員会」は12日の報告書で、台湾のワクチンや治療薬の知見をWHO加盟国が共有できず、世界全体の保健衛生が脅かされていると指摘した。
米国は中国の初期対応も批判するとみられる。トランプ米大統領は情報を隠蔽して感染を拡大させた責任を明確にしたいと訴えており、「中国との全ての関係を絶つこともできる」と強硬姿勢を示している。
総会では、WHOが「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言した時期も議論されそうだ。テドロス氏は1月22、23両日の緊急委員会で緊急事態宣言を見送った。中国が圧力をかけたとみられ、医療機関の検査態勢整備を促す同宣言が遅れたことで感染拡大を招いたと非難されている。トランプ氏はWHOを「中国寄りだ」として資金の拠出停止を発表した。
総会で米中関係の悪化は避けられず、米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は15日、「新型コロナへの対応をめぐる緊張の急激な高まりは、新たな冷戦の恐怖を引き起こした」と指摘した。同紙は、米中対立が貿易や技術、南シナ海など幅広い問題で緊張を招くと危機感を示す。米中は1月に通商分野で“休戦”したが、米商務省は今月15日、中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)への輸出禁止措置を強化すると発表し再び緊迫化してきた。
総会後も、米中の緊張は続く見通しだ。米海軍は13日、駆逐艦に台湾海峡を通過させた。台湾の蔡英文総統の2期目の就任式を20日に控え、中国を牽制したとみられる。総会で対中批判が高まれば、習近平指導部は22日に開幕する中国の立法機関、全国人民代表大会で反論する可能性もある。
一言コメント
ウイルスの影響がこんなところにまで…
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