減収事業者家賃対策 与野党が成果争奪戦 直接補助vs支払い猶予
- 政治・経済
- 2020年4月22日
新型コロナウイルスの感染拡大で家賃の支払いが困難になった飲食店などを救済するため、与野党が家賃の減免や猶予などの対策に前のめりとなっている。自民党は「1人一律10万円」の現金給付を巡って迷走した汚名返上の一手として、店舗などの借り手に対する直接補助の検討を始めた。第2次補正予算案での対応を念頭に置く。立憲民主党など野党は「家賃モラトリアム法案(仮称)」を来週にも共同提出する構えで、目玉施策の奪い合いとなっている。
自民党の岸田文雄政調会長は21日の記者会見で「支援はテナント(借り手)に対して直接行うことが大事だ。助成金、補助を考えていかないといけない」と述べ、自身が中心となって対策をまとめる決意を示した。
緊急経済対策に盛り込まれた現金30万円給付では、岸田氏は一律給付の持論を封じ、所得制限付き給付で党内をまとめた経緯がある。結果としてこれが「分かりにくい」と不評を買い、補正予算案の閣議決定やり直しという事態を招いた。岸田派議員は「(現金一律10万円給付の流れを作った)二階俊博幹事長や公明党の上を行くようなことを言うしかない」と危機感を募らせる。
そこで浮上したのが家賃補助だ。休業で減収となる飲食店などにとって、固定費の支払いは重くのしかかる。人件費や光熱費などは雇用調整助成金や現金給付などを活用すればカバーできる可能性があるが、「家賃支援には穴がある」(日本維新の会議員)からだ。
自民党内では現金給付での失態を「政府は国民の肌感覚が分からなくなっている」(党若手議員)と批判する声が根強く、家賃対策は党主導でまとめるべきだとの認識が広がりつつある。世耕弘成参院幹事長は21日の会見で「岸田氏のもとで具体化に期待したい」と前向きな姿勢を示した。ただ、制度設計によっては数兆円規模の財源が必要となる可能性があり、今後も調整が続きそうだ。
野党はこれに先立って動いている。日本維新の会が借り手の賃料を猶予する「家賃モラトリアム」を提唱。国民民主党も立憲民主党などを巻き込んで大型連休前に法案提出しようと準備を進める。借り手の家賃の支払いを猶予した上で、政府系金融機関が貸主に賃料を補塡(ほてん)。さらに、政府系金融機関が貸主に代わって借り手から回収するというスキームだ。借り手と貸主が共倒れする可能性を防ぐ狙いがある。
これに対し、岸田氏の念頭にあるのは、借り手に対する直接支援だ。現金給付の「反省」を受け、野党より「分かりやすい」形を模索。国による給付、または政府系金融機関の融資を想定する。
立憲の逢坂誠二政調会長は21日、野党統一会派の新型コロナ対策本部で「与党にも提案している。自民党は『待ってほしい』と言っているが、できればゴールデンウイーク前にも国会に出す」と野党単独の法案提出を示唆。岸田氏は「猶予は先々払ってくださいということだ。それでは不十分との問題意識を持っている」と述べており、与野党がけん制を続けている。
一言コメント
まずはスピード重視で進めてもらいたい。
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