石川県知事、外出自粛の東京都民に観光アピール 地元は困惑
- 政治・経済
- 2020年4月1日
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて東京都が週末の外出自粛要請を出す中、石川県の谷本正憲知事は3月27日に都民らに向け「無症状の人は(東京から)お越しいただければ」と県内への観光をアピールした。感染拡大で打撃を受ける県内経済に気配りした格好だが、首都圏との往来に注意を促す地方の自治体が多い中、異例の発言で、県内からは戸惑いの声も上がる。国の専門家会議は無症状者からの感染にも注意を呼びかけていて、専門家は「この時期に警戒を解いては絶対にいけない」と指摘している。
県は主催イベントを一律自粛していた方針を20日に転換。谷本知事は27日の会議で国の名勝「兼六園」(金沢市)の無料開放などを公表した後、報道各社の取材に「自粛疲れ」した都民に向けて「息抜きしたければ、無症状の人はお越しいただければ。新幹線もあり、2時間半で来られる」と述べた。
県内では27日時点で8人の陽性者を確認。谷本知事は国が示した区分のうち「収束に向かい始めているか、一定程度に収まってきている地域」に該当すると説明。「密閉、密集、密接」の3条件を排除するなどの対策をした上で、イベント再開方針を確認した。
背景には県内経済の落ち込みがある。1月25日~3月12日に県内の宿泊施設で6万6266泊分がキャンセルされるなど、2015年の北陸新幹線開業効果で好調だった県内経済に急ブレーキがかかりかねない。
一方、東京都は25日、感染経路が追えないケースが増え、感染爆発の懸念が高まっているとして週末の外出自粛を要請。地方でも▽首都圏からの来県者には2週間、不要不急の外出自粛を要請(岩手県)▽県外からの帰省者らに不要不急の外出自粛を呼びかけるチラシを配布(佐賀県)――など首都圏との往来に神経を使う。
国の専門家会議は19日の提言で「無症状者や軽症者が本人は気づかずに感染を広めてしまう事例が多く見られる」としている。東京医療保健大の菅原えりさ教授(感染制御学)は「観光客が自然に来るのは別として、知事が言葉に出して呼びかけるのはどうか」と指摘。無症状者が滞在中に繁華街に繰り出すことがあるとし「3条件を必ず回避できる保証があればいいが、石川が少し落ち着いているからどうぞ、というのはあまりに根拠がないのではないか」と疑問視した。
県では31日までにさらに感染経路が追えていない3人を含む5人の感染を確認。谷本知事は31日、毎日新聞の取材に「無症状の人は我々にはわからない」「来るなと拒否する必要はない」と述べた。
「もろてを挙げて喜べる発言ではない」。県南部の旅行業者は複雑な心情をにじませる。割安プランを打ち出すなど誘客に懸命だが、県内への移動によるさらなる感染拡大には不安が強い。観光政策に携わる県職員からは「今は石川への旅行を呼びかけられる状態ではない」との声も漏れた。
一方、30日に無料開放が始まった兼六園では県内外からの観光客が咲き始めた桜を楽しんでいた。東京から訪れた男子大学生は谷本知事の発言に「煙たがらずに歓迎してくれるのはうれしい。家から出ないようにしているので気分転換になった」と話した。【阿部弘賢、井手千夏】
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27日の記者会見での谷本知事の発言要旨は次の通り。
◆記者 石川県民が東京に行かないことは理解できるが、東京など都市部からの観光客は県内にも流入している。感染対策は。
◆谷本知事 (前略)自宅でずっと自粛生活を続けるのは人間として耐えられない部分がある。どこかで息抜きをしたいという気持ちがあれば、無症状の人は石川県にお越しいただければ。新幹線もあり、2時間半で来られるので。東京から来る人はみんな感染している可能性があるから一切受け入れないという決断をすると、地元の産業に甚大なダメージを与えるということになる。そんな鎖国政策を取ることはできない。
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そりゃちょっとねえ~
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