関電、破格の土地売買 原発温排水で苦情、元助役が仲介
- 企業・経済
- 2020年3月7日
1985年に運転が始まった関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)から出る温排水をめぐり、関電が地元の港運会社とトラブルとなり、当時町助役だった故・森山栄治氏に仲介を頼んで本来の価格の2倍ほどの約11億円で土地を購入することで解決していたことがわかった。関電役員らの金品受領問題を調査している第三者委員会は、森山氏が関電に影響力を及ぼす起点になったとして報告書に盛り込む模様だ。
83~87年に関電の副社長を務めた故・内藤千百里(ちもり)氏は2014年に朝日新聞の取材に応じており、改めて発言を確認したところ、森山氏に解決を依頼したと証言していた。土地取引に関わった港運会社の現会長も今回、土地の取引や森山氏の仲介を認め、第三者委に経緯を回答したと、取材に明らかにした。
登記簿などによると、この土地は高浜原発の北約1キロの山林と埋め立て地など約8万9千平方メートル。関電は87年2月に所有権の移転請求権を仮登記、同4月に買い取り、本登記した。本来の価格は、付近の路線価や埋め立てにかかった費用などから計算すると5億~6億円で、港運会社の現会長も同様の説明をしている。
港運会社は67年に設立後に山林から採取した土砂で海岸を埋め立てて貯木場などを整備。高浜3、4号機の運転開始後に温排水で海水温が上がり、木を食べる二枚貝の仲間「フナクイムシ」が繁殖し、木材に被害が出て経営難に陥ったとして、関電に賠償を求めた。
内藤氏は取材に対し、関電は当時、すでに温排水の補償は関電と地元との間で終わっており、改めて応じると補償問題が継続することになると説明。港運会社の当時の社長に補償を断る代わりに土地取引を持ちかけたと証言した。現会長によると、港運会社は約12億3千万円を求めたが、関電はその半額程度を示し、交渉は難航したという。
現会長によると、86年夏に森山氏の要請で関電、港運会社、森山氏による協議が開かれ、その後に約11億円での売買が決まった。
当時、国土利用計画法で1万平方メートル以上の土地取引は事前に県へ届け出る必要があり、取引価格が周辺の状況を考慮して著しく適正を欠く場合、県は買い主に契約中止の勧告を出すことになっていた。内藤氏は、土地取引をめぐり「県に話してくれ」と、森山氏に口利きを依頼したと証言。内藤氏は「脱法です」と話していた。
一言コメント
当事者も次々と故人になっている…
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