みやま市三セク業務委託問題 取締役会承認得ず契約、損失発生も 市長、経営見直し表明
- 不祥事
- 2020年2月21日
福岡県みやま市が出資する第三セクターの電力小売業「みやまスマートエネルギー」(みやまSE)の業務委託の手続きに不備があった問題で、同市は20日、問題に関する調査委員会の報告書を公表した。取締役会の承認を得ていない契約が複数あり、みやまSEの利益に損失が生じた可能性を指摘した。松嶋盛人市長は「早急に体制を見直す」と述べ、社長交代も含め、経営体制や契約の見直しを検討する考えを示した。
みやまSEは、民間企業の「みやまパワーHD」に電力の需給管理などを委託し、磯部達氏が両社の社長を兼務している。報告書によると、社長が同一人物の両社間の取引は会社法上の「利益相反取引」にあたり、取締役会の承認を得る必要があるが、10件の取引のうち5件で承認がなく、他の契約も含め計7件で取締役会の承認が得られていなかった。
利益相反取引は、一方が利益を得ると同時に、一方に不利益が生じることをいう。今回の場合、みやまパワーHDに「著しく有利」との見方もできる契約が確認され、みやまSEに不利益が生じる構図となっていた。
このほか報告書では、みやまパワーHDが負担すべき経費を、みやまSEが負担している可能性があることや、みやまパワーHDが自治体新電力のブランドを利用し、市とは無関係の事業者と連携しているとして「みやまSEの利益に貢献しているとは言い難い」と指摘した。
みやまパワーHDが、みやまSEの子会社化を検討していたことも明らかになった。
報告書は、現状を「みやまパワーHDのためのみやまSEとなっている」とした上で、「利益相反取引が継続する体制を早急に見直すことが必要」と結論付けた。
記者会見で、松嶋氏は「みやまSEや(取引のある)その他の自治体新電力が、みやまパワーHDの子会社のような構図になっている。本来の『エネルギーの地産地消』とは違った形であり、是正に取り組む。原点に戻り、地域新電力としてみやまSEを維持、発展したい」と述べた。みやまSEの損失額は、確認の上で返還を請求するなどの措置を検討する。
みやまSEは市を通じ、「報告書の指摘を真摯(しんし)に受け止め、指摘事項の再発防止を目的として是正を図った」との文書を公表した。
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みやまSEをめぐって、民間企業への不透明な金の流れが調査報告書で明らかになった。
みやまSEは平成27年2月に設立された。市内の太陽光発電所などの電気を市内で消費する「エネルギーの地産地消」を掲げ、自治体電力の草分けとして全国の注目を集めた。
しかし、次第に市議会で経営姿勢に疑義が突き付けられるようになった。地産地消をアピールしながら、市内の電力契約件数が伸びていないことや、業務委託の不透明さ、議会への報告が不十分な点などが問題視された。
電力の契約件数は昨年12月現在では3815件で、このうち市内の家庭用電力(小規模店含む)の契約は1242件と、市内約1万4千世帯の9%にとどまり、当初目標とした「1万件」を大きく下回る。
大口顧客の獲得が契約通り進まず、平成28年度までの累積赤字が約3500万円と債務超過に陥ったが、売り上げが伸びたことで、債務超過は30年度に解消した。
市民には、市が出資している安心感から、電力契約を結んだ人も多い。市民の信頼を取り戻すため、市や、みやまSEには、報告書が指摘した問題点の早急な是正が求められる。
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