教員わいせつ公表に差 31教委、被害者に確認 処分者氏名公表16教委 毎日新聞調査
- 公務員
- 2020年1月20日
児童・生徒にわいせつ行為をした教員の懲戒処分の公表のあり方について教育委員会で対応が分かれている。毎日新聞が47都道府県教委にアンケートしたところ、17教委が、被害者側が非公表を望んだ場合、事案そのものを公表しないことがあると回答した。処分情報の公開が不十分だと再任用され再犯につながる恐れもあり、専門家は「再発防止の観点から被害者のプライバシーに配慮した上で原則公表すべきだ」と指摘している。
アンケートは2019年6~8月に実施した。処分を公表するかどうかについて31教委が被害者の意向を確認して判断していると答えた。処分は記者会見などを通じて公表されることが多いが、その内容は各教委の裁量に委ねられており、教員の性別やわいせつ行為の内容も伏せられることがある。
教員の氏名に関しては「公表」(懲戒免職など条件付きも含む)が16教委だったのに対し「非公表」は19教委。10教委は「事案による」と回答した。学校名は、公表16教委▽非公表19教委▽事案による10教委――などで、氏名と学校名の非公表については被害者が特定されることを理由に挙げる教委が目立つ。
被害者側が望んだ場合、事案自体を公表しないことがあると答えた17教委のうち愛知県教委は14~15年度に子どもへのわいせつ行為による教員の懲戒処分47件中10件を非公表にした。その理由を「被害者のプライバシー保護のため」と答えた。高知県教委は原則公表しているが、「1自治体に1校しかないような山間部で事案が起きた場合は子どもが特定されてしまうので事案によって情報を伏せることがあるかもしれない」と説明した。
一方、神奈川、和歌山県教委は「被害者の意向は聞くが被害者が特定されないよう配慮していることを理解してもらった上で公表」、宮崎県教委は「時期を遅らせて公表する」という。
公表したことで被害者が特定され問題になったケースの有無を尋ねたところ、「ない」39教委▽「把握していない」7教委▽無回答1教委――だった。
文部科学省は、わいせつ事案に限らず教員の懲戒処分について「行政の透明性」「再発防止」の観点から各都道府県教委に積極的な公表を促す一方、被害者のプライバシー保護に十分配慮するよう求めている。
情報公開に詳しいNPO法人「情報公開クリアリングハウス」の三木由希子理事長は「関係者以外の人にも被害者が誰なのかが特定されてしまい2次被害が懸念される場合は非公表はやむを得ない」としつつ、「非公表は被害者ではなく結果的に教員側を守る側面が強い。公表することは組織として自浄能力が作用していることを社会に示す。説明責任を果たし、信頼性を確保する意味で公表は必要だ」と話している。【ガン・クリスティーナ、坂根真理】
◇わいせつ行為をした教員の懲戒処分の公表について被害者側の意向を確認して判断すると回答した31教委
北海道、○青森、○岩手、○山形、福島、茨城、○栃木、○千葉、神奈川、○福井、○山梨、○愛知、○三重、○滋賀、○京都、兵庫、○奈良、和歌山、鳥取、○島根、岡山、山口、○徳島、○香川、○愛媛、○高知、福岡、長崎、熊本、宮崎、鹿児島
※○がついた17教委は被害者側の要望で事案自体を非公表にすることがあると回答。ただ、山形、千葉、島根、高知は規定上は非公表にできるが原則公表
一言コメント
被害者への配慮という理由も理解できる。
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