航空自衛隊F2後継機、米軍「戦術データリンク」搭載へ レーダー情報共有
- 政治・経済
- 2019年12月15日
政府は、航空自衛隊のF2戦闘機の後継となる将来戦闘機に、米軍が使用する「戦術データリンク」を搭載する方針を固めた。情報共有の装備のことで、エンジン、レーダー、統合システムなど主要部分は国産化を目指すが、米軍と自衛隊の相互運用性を維持するための基盤を確保する。2020年度当初予算案には基本的な構造設計など初期開発費として100億円超を計上。政府は20年末に向けて機体性能の詳細や開発機数を詰めるとともに、米国などの企業が開発に参画する割合の調整を進める。
日米両政府は今年9月、防衛当局の実務者レベルで将来戦闘機構想に関する協議を本格化させた。自衛隊と米軍との共同作戦に最低限必要な環境を整えるため、レーダーで捉えた敵の航空機や艦船の情報や画像を共有する戦術データリンク、敵機と自軍・友軍機を識別する敵味方識別装置は米側から提供を受けたい意向を伝えた。政府関係者は「中国や北朝鮮の軍拡路線を考慮しても、自衛隊と米軍の共同運用性を維持するのは必須だ」と指摘する。
将来戦闘機は30年代から退役を迎えるF2の後継機として20年に開発に着手する。政府は米国から購入中のF35A・B(計147機を調達予定)を主力戦闘機と位置づけ、将来戦闘機にはF15(現有201機のうち約100機を近代化改修)と同様、領空侵犯に対するスクランブル対処などを担わせることを想定。即応性を重視してパワーのあるエンジンを積み、対空・対艦ミサイルも多数搭載できる大型機とする方向だ。
政府は18年末に策定した中期防衛力整備計画で「国際協力を視野に、わが国主導の開発に早期に着手する」との方針を示した。協力相手には英国や米国を想定している。英国は既に新たなステルス戦闘機の開発構想を明らかにしているが、日英の政府間協議では開発の主導権を巡る調整が進展していない。一方、米国は空軍用の新たな戦闘機開発が具体化しておらず、自衛隊と米軍の双方が運用する戦闘機を共同開発する計画はない。だが、唯一の同盟国である米国との関係を考慮し、政府は米企業の技術導入も検討している。
日本政府は、将来戦闘機と多数の無人機をネットワークで結ぶ運用などを想定しており、性能向上や機器の更新などを独自に進めるための「拡張性」が必要だと米側に理解を求めている。過去に米国の支援でF2を開発した際、米側が主要なシステムの機密情報をブラックボックス化し、開発や改修に苦労した経緯がある。日本企業は防衛装備庁の支援で機体、エンジン、レーダー、センサーなどの要素技術の開発を進めているが、日本政府は最も難しいとされる各システムの統合も日本企業に担わせたい意向だ。
日本企業は戦闘機の開発実績に乏しく、政府内でも「日本主体で開発できるか不安も残る」(防衛省幹部)との見方が根強い。来年大統領選を控えるトランプ米大統領が、米企業の参画を強く求めてくる可能性もある。政府は日本企業の開発状況もにらみながら、米英などとの協力体制の検討を続ける。
一言コメント
予算も結構かかりそうだ…
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