日本船防護、危険地域は他国に依頼 自衛隊中東派遣で政府方針
- 政治・経済
- 2019年12月15日
政府は年内にも予定している海上自衛隊の中東派遣に関し、今年5~6月にタンカーへの攻撃が発生したオマーン湾の北西側を護衛艦の活動海域から外し、この海域で日本関係船舶に危険が迫った場合、原則として米仏など他国の軍に保護を要請する方針を固めた。複数の政府・与党関係者が明らかにした。
派遣の主な目的が情報収集であることに加え、自衛隊が対応した場合、憲法違反の武力行使となる可能性が排除できないため。中東で活動する他国軍とは情報共有を含めて連携していく構えで、政府は23日にも閣議決定する実施方針に「諸外国等と必要な意思疎通や連携を行う」と明記する予定だ。
政府は海自を派遣する海域として、イランの領海が含まれるホルムズ海峡は除外したうえで、オマーン湾▽アラビア海北部▽バブルマンデブ海峡の東側――を挙げている。ただ、ホルムズ海峡に近いオマーン湾の北西側では今年5月12日と6月13日、タンカーが何者かに攻撃される事件が相次いで発生。政府内からは「情勢は落ち着いているが、同様の攻撃はいつ発生しても不思議ではない」との声が上がる。
日本船籍の船や日本への積み荷を載せている船などが襲われた場合、河野太郎防衛相は「海上警備行動」を発令して部隊に武器を使って保護させることができるが、相手が国や国に準じる組織の場合は憲法が禁じる「国際紛争を解決するための武力行使」に当たる恐れがある。5~6月に起きた事件では攻撃の主体が今も確定しておらず、国や国に準じる組織だった可能性も指摘されている。
このため政府は、オマーン湾の北西側は活動海域から外し、海上警備行動に基づく日本関係船舶の護衛は原則として活動海域内に限定。ホルムズ海峡やオマーン湾の北西側で不測の事態が発生した場合、現場近くに展開している他国の軍や沿岸警備隊に対応を依頼する考えだ。政府関係者は「海上警備行動を発令する可能性は極めて低いだろう」と話す。
自民・公明両党内には憲法との整合性を保つことに加え、事態がエスカレートしないための「歯止め」の明確化や部隊の安全確保を強く求める意見がある。政府は中東への自衛隊派遣によって「自国船舶は自国で守るべきだ」という米国のトランプ大統領の主張に一定程度応えつつ、活動海域を限定することで自民・公明両党から派遣への理解を得たい考えだ。
ホルムズ海峡周辺では米国や英国、豪州などが参加する米主導の有志連合が先月から活動を始めているほか、フランス、イランも民間船舶の安全確保に向けた多国間連携をそれぞれ呼びかけている。政府は閣議決定後、海賊対処のために既に中東・アデン湾に派遣されている哨戒機P3C2機のうち1機と、新たに派遣するヘリ搭載型護衛艦1隻による情報収集活動を始める調整をしている。
一言コメント
派遣は必要だろうが、慎重に調整していただきたい。
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