「イートイン脱税」したくないのに…「中で食べる」と告げても店員の半数が8%処理 コンビニ50店調査
- 政治・経済
- 2019年11月18日
消費増税に伴い軽減税率制度が導入され、コンビニエンスストアのイートインは10%、テイクアウトは8%になりました。コンビニ各社は、会計の際に客が自己申告する方法をとっていますが、現実には申告せずに8%の税率で買い物をして、店内飲食する人が続出し「イートイン脱税」という言葉まで生まれました。では客が「イートインする」と正直に申し出たら、スタッフは適切に対応するのでしょうか。税理士ドットコムトピックスのスタッフが、東京都内を中心にコンビニ50店舗を回って調べたところ、半数の25店舗で8%のまま会計処理され、店員に運用が浸透しきれていない実態が浮き彫りになりました。(ライター・国分瑠衣子)
●「お手拭き」まで渡してくれたのに8%で処理
調べたのは東京都内と神奈川県内のセブン-イレブン、ローソン、ファミリーマート、ミニストップ、デイリーヤマザキの計50店舗です。11月上旬、各店舗でおにぎり1個を買い、会計する時に「中で食べます」と一度だけ伝えて、本当に10%の税率が適用されるかを調査しました。時間帯は平日の午前8時30分から午後7時までで、繁華街と住宅街とエリアを分けました。また、コンビニでは外国人も多く働くため、日本人と外国人の偏りがないようにしました(日本人33人、外国人17人)。
調査の結果、正しく10%の会計処理をした店舗と、8%の税率のままだった店舗はそれぞれ25店舗ずつで半々でした。国籍別にみると、日本人店員33人中、11人が8%のままだった一方、外国人店員は17人中、14人が8%のままでした。
東京・杉並区内のコンビニでは、店長のプレートを付けた日本人男性が対応しました。「中で食べます」と申し出たところ、「はい、わかりました」と言い、お手拭きまで渡してくれたにも関わらず、レシートを見ると8%の税率でした。東京・品川区内のコンビニでも、高齢の日本人女性店員から「食べ終わったらそこにあるゴミ箱に捨ててね」とまで言われたにも関わらず、8%でした。
店内飲食を申し出ること自体、珍しいのか東京・品川区内のコンビニでは、男性の日本人店員から「正直に言ってくれてありがとう。素晴らしい」とほめられました。東京・港区内のコンビニでも、日本人店員から「えっ、ここでですか?」と驚かれました。
●ある店のオーナー「申し出た人を1人も見たことがない」
コンビニのオーナーはこの運用にどのような印象を抱いているのでしょうか。東北地方のコンビニのオーナーは「本部からは『店内飲食の確認は不要』との指示が出ているため、店員側からイートインかテイクアウトかの確認はしていない」と説明します。その上で「10月1日以降もイートインコーナーを利用している人はもちろんいますが、申し出た人は1人も見たことがありません」と明かします。
関東地方の別のコンビニオーナーも「スタッフ全員に、運用方法の説明をしていますが、客からの申告はほとんどありません」と話します。その上で「自己申告に委ねるという運用自体に無理があると思う。最初からテイクアウトもイートインも8%に統一したらよかったのでは」と疑問を投げかけています。
10月1日以降、イートインコーナーの利用客が半減したという関西地方のオーナーは「コンビニ業界に責任があるのではなく、そもそもこうした混乱を想定せずに、導入に踏み切った国が対策を講じるべきでは」と話します。
●業界団体、「イートイン脱税」に「本当にショックだし困惑している」
こうした事態を受けて、コンビニ8社が加盟する、日本フランチャイズチェーン協会(東京都港区)は、11月末までに全国5万8000店舗で「店内飲食する場合は、会計前に申し出てほしい」という内容の店内放送を流すことを決めました。消費者にコンビニの運用について理解してもらうことが狙いです。
同協会が対策を講じるのは今回が初めてではありません。軽減税率導入と同時に「イートインは10%、テイクアウトは8%」と明記したポスターを作製し、コンビニのレジ付近や店内に掲示してきました。ところが、SNS上で「申告せずに食べている人がいる」など“ザル運用”の報告が広がりました。協会の担当者は「『イートイン脱税』という言葉まで生まれてしまい、本当にショックだし困惑している」と話します。対応策として、ポスターに加えて店内放送で周知することにしたのです。
また、「店舗のスタッフが運用を正しく理解していないケースがあることも事実です」と認めます。協会の職員たちも10月1日以降、覆面調査員として全国のコンビニを回り、正しく運用されているかを確認したといいます。その結果、スタッフが理解していないケースが複数あったため、コンビニ各社に運用の徹底を呼び掛けました。コンビニの中には、外国人向けにマニュアルを作り直すなど「相当の努力をしている会社もある」(同協会)と言います。
一方で同協会は「コンビニ業界としてできることには限界もある」と訴えます。担当者は「例えば雨宿りのために、イートインコーナーを短時間使った人が『タダで使うのは申し訳ないから、アイスでも買おう』と善意で商品を買ってくれて、申告し忘れた場合に、咎めることはできるでしょうか」と疑問を投げかけます。このほか、正直に申告してもイートインコーナーが満席で、利用をあきらめるケースも想定されます。
同協会は「今後も消費者、コンビニ双方への周知を続けたい」と強調します。生活に身近なコンビニのイートインコーナーは、さまざまな場面で利用されるため、線引きが難しいケースも少なくありません。公平性を保つためには、税率を一本化するなど、根本的な見直しが必要なのかもしれません。
弁護士ドットコムニュース編集部
制度に問題があるからこうなる。
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