ISの新最高指導者ハシミ氏とは? 選定の意図は?
- 国際
- 2019年11月10日
【記者:Raf Sanchez】
アブバクル・バグダディ容疑者が2014年、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」の最高指導者として世界に名乗りを上げたのは、イラク北部モスルのヌーリ・モスクでのことだった。当時この地は、イラクからシリアにわたって広がったジハーディスト(聖戦主義者)たちの帝国の重要な拠点だった。
バグダディ容疑者の後継者の就任時、このような壮大さはどこにもなかった。
アブイブラヒム・ハシミ・クラシの名で知られる男が、燃え尽きたカリフ制国家の最高指導者となる。後継者は、7分半の音声テープで発表された。ハシミ氏自身は他のIS指導部と共に、身を隠している。ISはモスルの他、支配下に置いていたすべての都市から追い出された。かつて英国と同規模だった支配地は、シリア東部の砂漠地帯の数か所を残すのみに縮小した。
音声声明ではISの新たな報道担当者がハシミ氏について、米国との戦闘経験がある「戦争の司令官」と表した。このことからハシミ氏はバグダディ容疑者同様、2003年の米主導の有志連合軍のイラク侵攻後、米軍と戦ったイラク人ではないかとの指摘が一部で上がっている。ISの事実上の首都はシリア・ラッカだったが、指導部の多くはイラクの国際テロ組織アルカイダ出身のイラク人だった。
ハシミ氏について、国際テロリストとして指名手配されているアブドラ・カルダシュ容疑者と同一人物ではないかとの臆測もある中、米シンクタンク・世界政策センターのアナリストのハサン・ハサン氏は、その可能性は低いと指摘する。
カルダシュ容疑者は西側諸国の情報当局によく知られており、狙われやすい標的となる可能性がある。知名度の低い指導者を選ぶことで、敵を混乱させようと考えているのではないかとの見立てだ。
ハシミ氏は、バグダディ容疑者のようにカリフ制国家を統治することはないが、それでも世界中に大勢の忠実な配下が集う世界で最も強大なテロ組織の指導者だ。
米国は、いまだに1万4000人のIS戦闘員がシリアとイラクで活動していると見積もっている。西側諸国の当局者らは、ISがシリア北部の混乱に乗じてクルド人勢力が運営する収容施設から同胞たちを脱獄させるのではないかと懸念している。
2000人の外国人を含むIS戦闘員1万人が現在、クルド人主体の民兵組織「シリア民主軍(SDF)」に拘束されている。米国家テロ対策センターのラッセル・トラバース氏よると、ここ数週間で約100人が脱走しており、今後数か月で脱走者がさらに増える恐れがあるという。
バグダディ容疑者は最後の声明で、支持者に対しクルド人勢力の手から「ムスリムの捕虜たち」を解放するよう呼びかけた。ISの新たな報道担当者はハシミ氏の就任を発表する声明で、この主張を繰り返した。
シリア、イラク国外を見ると、ISはフィリピンやアフリカ中部、エジプト・シナイ半島の砂漠などに約20の関連組織がある。
イスラム国は音声声明で「米国よ、イスラム国はすでに欧州の戸口にたどり着き、アフリカ中部にいるとなぜ気付かない? 西から東にいたるまで再び勢力を維持、拡大しているのだ」と述べている。
我々はハシミ氏自身について、また、弱体化したもののいまだ恐ろしいジハーディストたちを同氏がどう導こうと考えているのか、これから知ることになるだろう。【翻訳編集】AFPBB News
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