<佐賀豪雨>支払い済み修理は補助外 被災者、支援制度に困惑 2カ月たち新たに対象拡大も 生活再建とちぐはぐに
- 事件・事故
- 2019年10月28日
8月末の記録的大雨で浸水被害に遭った佐賀県内の被災者への公的支援の手続きが進む中、「業者に支払いを済ませているので制度が利用できない」など、被災者が困惑する事案が起きている。事前の周知が不十分だったほか、国の制度の詳細決定に時間がかかり、生活再建の動きと後先になった格好だ。被災から2カ月近くたって新たに対象が広がった制度もあり、行政担当者も戸惑っている。
「支払ってしまってますか…。それでは応急修理制度の支援は受けられません」。杵島郡大町町役場で罹災りさい証明書の発行手続きをしていた老夫婦に、町職員が申し訳なさそうに伝えた。夫婦は既に家屋の一部改修を終え、60万円余りの領収書を持参していた。職員は理由を「資力があるとみなされてしまうから」と説明した。
災害関連の制度を紹介する冊子に、応急修理制度の対象を「自らの資力で応急修理をすることができない人」と明記している自治体もある。工事は行政が業者に依頼して代金を支払うため、支払いまで完了していると難しいという。大町の夫婦は別の場所の改修で約60万円の制度を利用できることで救われたが、「初めから言ってくれていたら…」と不満な様子を見せた。
国のこの制度は支援内容が10月24日になって「損害割合10~20%未満の住家にも30万円を限度に支援」と拡充された。台風15号や19号被害なども考慮した対応だが、武雄市復興対策室は「対象外と説明を受けて支払い済みの人も多いのではないか。拡充はいいことだが、もう少し早くしてもらえれば…」と漏らす。
武雄市で床上浸水した男性(58)は、畳をフローリングに替えた費用を申請しようとしたが、取り換えた床板の写真を添えるように指摘を受けた。「フローリングをはがすわけにもいかず、業者が床に潜って写真を撮ってくれた。完全な二度手間」と怒った。
この男性の場合、制度の対象になるのは床板を替えた費用。畳を替えていればその費用も出るが、「原状復帰」ではないフローリングの費用は出ない。「もう少し融通が利かないものか…」と不思議がった。
武雄市や大町町によると、被災者が合点がいかず、説明が必要になる事案は他にもある。壁やクロスの張り替えは、浸水した高さの比率に応じて補助費用が算定される。「浸水した部分だけの張り替えなどできない」と不満が漏れる。家に戻れずアパートを借りたが、「みなし仮設住宅」の受け付け開始前だったため、行政の家賃負担が受けられなかったケースもある。
いずれも被災者や業者が把握していれば混乱が避けられる事案だが、武雄市は「制度の概要が決定したのが9月20日。確定していないことをいい加減には伝えられない」と話す。
制度設計で国と協議した佐賀県消防防災課は「30年ぶりの法の適用で油の流出被害もあり、関係部署を含めて調整に時間がかかった」とし、「被災者に事前に留意すべき点を伝えるなど、反省点や課題を検証して市町に研修で伝えるなど今後に生かしたい」と話す。
一言コメント
行政側もかなり混乱したようだ。
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