日米貿易協定発効へ 小売り外食歓迎、車は安堵
- 政治・経済
- 2019年10月9日
日米両政府が署名した貿易協定が発効すれば、米国産牛肉や豚肉、ワインなどの輸入関税が下がり、消費者には恩恵となる。小売りや外食業界などは歓迎し、米国による追加関税を回避できた自動車業界からも安堵(あんど)の声がもれた。一方、畜産農家には、安価な輸入品に対する警戒感も広がる。
米国産牛肉の輸入関税は38.5%から段階的に引き下げられ、最終的に9%になる。ステーキ店「いきなり!ステーキ」などを運営するペッパーフードサービスは「動向をみながら(値下げなど)顧客へどう還元できるか前向きに検討中」(広報担当者)と話す。
米国産牛肉への依存度が高い牛丼チェーン各社も、調達コストの低下が期待できるため、「中長期的にはプラスになる」(大手関係者)と好意的に受け止める。ただ、牛丼向けの牛肉部位は市場での価格変動が大きく、各社とも現時点では値下げに慎重な姿勢だ。
牛肉のほか、豚肉も関税が引き下げられる。米ウォルマート傘下で同社からこれらを調達する大手スーパーの西友は「販売しやすい環境になる」(広報担当)と前向きにとらえる。
米国産ワインの関税は最終的に撤廃される。米国産ワインを展開するメルシャンは「今回の協定でワインへの関心が高まるのは好ましい」(広報担当者)と歓迎。日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)が2月に発効した際には、各社が欧州産ワインの一部を値下げしたため、今回も米国産の値下げが期待できそうだ。
自動車輸出では日本が求めた関税撤廃について、さらに交渉すると先送りされた。だが、最大25%とされる追加関税と輸出数量規制を米国が日本に発動しないことが確認され、自動車業界は「日米間の自由で公正な貿易環境が維持・強化されることを歓迎する」(日本自動車工業会の豊田章男会長)と胸をなでおろす。また、関税が撤廃される一部の工作機械など、工業品は対米輸出の追い風となる。日本工作機械工業会の飯村幸生会長は「速やかに発効されるよう要望する」と期待感を示した。
一方、米国産の安価な牛肉や豚肉の輸入に対し、畜産農家には危機感もある。北海道の養豚農家は「米国の畜産農家は自分の畑でつくった飼料を使うことが多く、低価格を維持できる。その上、関税が下がるのは不安だ」と話す。
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業界によってもとらえ方は様々だ。
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