不適切投信販売、高齢者23万人超調査 ゆうちょ銀、1・9万件と発表
ゆうちょ銀行と日本郵便は13日、高齢者に対する投資信託の不適切な販売が1万9591件あったと発表した。両社は対象の顧客に意向に沿わない契約がなかったかを確認するほか、投信を購入したすべての高齢者約23万5千人に対しても契約実態について調査する。日本郵政グループではかんぽ生命保険でも大規模な不適切販売が発覚するなど、金融商品販売をめぐるガバナンス(企業統治)不全が深刻化している。
ゆうちょ銀と日本郵便は社内規定で、70歳以上の高齢者に投信を販売する際は、勧誘前と契約前に健康状態や商品の理解度を担当者とは別の管理者が確認することを定めている。
社内調査では勧誘前の確認を怠っていた規定違反が発覚した。平成30年度の約1年間でゆうちょ銀では1万7700件、投信販売を委託されている郵便局で1891件。ゆうちょ銀では直営店233店舗のうち213店舗と約9割もの店舗に違反が広がっていた。
ゆうちょ銀の担当者は違反の背景を「社員が『手間をかけたくない』と安易に考えていた」と社員の認識不足を指摘。2回の管理者の承認を定めるのは、認知症ではないことなどを確認する意味合いもあるが、「本社の指導不足でこの趣旨の認識が徹底できていなかった」と説明した。
同日会見したゆうちょ銀の西森正広常務執行役は陳謝し、「社員のコンプライアンス意識の向上や再発防止策に全力をあげる」と述べた。元本割れのリスクを知らずに結んだ契約で損失が出た場合は補填(ほてん)するなど業界ルールに沿った対応を取る。確認を怠った管理者計約850人への処分も調査を踏まえて決める。
かんぽ生命の不適切販売問題は過度な営業ノルマが要因となったが、会見に同席したゆうちょ銀の投信事業の責任者は「ノルマが原因ではない」と否定。だが、社員への聞き取り調査で「営業が大変だとの声もなくはない」と明かした。ゆうちょ銀は低金利で運用収益が落ち込む中、投信販売を成長の柱と位置付け強気な販売目標を掲げており、これが今回の問題に影響したとの疑念は残る。
今回の問題発覚後に郵便局では投信販売を自粛中だが、ゆうちょ銀では通常通りの販売を継続するなど、顧客の不安解消より販売優先の姿勢が垣間見える。相次ぐ不祥事で地に落ちた信頼回復に向けては、企業統治の再構築が不可欠だが、今の経営姿勢からはその道筋がみえてこない。
一言コメント
改善には時間がかかりそうだ。
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