英首相、苦境に 下院がEU離脱延期の法案審議へ
- 国際
- 2019年9月5日
10月末までのブレグジット(イギリスの欧州連合離脱)を掲げるボリス・ジョンソン英首相が苦境に立たされた。3日に再開した英下院は、議事進行の主導権を政府から議員側に移す動議を賛成328票、反対301票で可決。与党・保守党の議員21人が、欧州連合(EU)離脱に突き進む政府にストップをかける、野党側の動きに加わった。
これにより下院は4日、合意なしブレグジットを阻止し、離脱期限を来年1月末まで延ばす法案の審議に入る。
保守党幹部は、動議に賛成票を投じた議員は党から追放する考えを示していたが、合意なしブレグジットに不安を募らせる与党議員の「造反」を食い止めることはできなかった。
造反した中にはフィリップ・ハモンド前財務相、デイヴィッド・ゴーク前法相、ケン・クラーク元財務相といった閣僚経験者や、ニック・ソームズ議員などが含まれていた。クラーク議員は連続議員歴最長の保守党長老で現在、「下院の父」という敬称で呼ばれている。また、ソームズ議員はウィンストン・チャーチル元首相の孫。
造反議員は3日夜の時点で、保守党を追放された。党員資格を剥奪(はくだつ)され、無所属議員となった。
これによって下院では4日、野党側提出の法案が審議されることが決まった。
法案は、議会が10月19日までに、EUとの新たな合意案を承認するか、合意なしブレグジットに賛成しない限り、首相に対し、離脱期限を来年1月31日まで延ばすようEUに要請することを強いる内容。
ジョンソン首相は、EUとの合意の有無にかかわらず、10月31日までにブレグジットを実現することを公約に掲げ、政権を握った。そのため、離脱期限の延長には強く反対している。
野党提出の法案についてジョンソン氏は、ブレグジットの合意交渉において、EU側に「主導権を渡す」ものと批判。「さらなる迷いと、遅れと、混乱」を招くと反対している。
また、ジョンソン首相の答弁の最中、保守党のフィリップ・リー議員が議席を立ち、野党・自由民主党の席へと移動。これにより、保守党はそもそもわずか1議席差で保持していた過半数を失った。
■総選挙へと動く首相
ジョンソン氏は、野党側提出の法案が可決された場合には、議会を解散し、総選挙に持ち込みたい意向を表明している。BBCの取材では、10月15日ごろの投開票を視野に入れているとみられる。
ただ、総選挙を前倒して実施するには、下院(定数650)で3分の2以上の議員の同意が必要だ。それを確保できるかは不透明だ。
最大野党・労働党のジェレミー・コービン党首は、「合意なし(ブレグジット)の可能性をなくす」ため、総選挙の前に野党側提出の法案を成立させる考えを示した。
英議会はジョンソン氏の決定により、9月第2週から5週間閉会する。ブレグジットに反対する議員らからは、議会に十分な審議の余地を与えない「非民主主義的」な方策だとして反発を強めている。
一言コメント
早くも崖っぷちに追い込まれた!?
コメントする