福岡にデータセンター商機 九電系、都市型を新設 首都圏企業の利用増
- 企業・経済
- 2019年9月3日
九州電力の通信系子会社、QTnetは2日、福岡市博多区で今月から営業を始めたデータセンター(DC)を公開した。JR博多駅から徒歩数分にある都市型DCとして、保守や非常時の対応への利便性をアピールし、顧客獲得を進める。
同社3カ所目となる「QiCデータセンター博多駅」は9階建てで、延べ床面積は約1万平方メートル。サーバーなどを収容する「ラック」は最大1400台設置できる。
DC最大の敵は、電気の不安定化だ。停電はもちろん、落雷などによるコンマ0秒レベルの瞬時電圧低下(瞬低)でも、データが消失する危険性がある。
この瞬低を防ぐため、建物の免震構造に加え、非常時用の発電機や電源装置を備えた。九電グループとして、技術力を強調する。
DCの需要は高まっている。
QTnetが保有する既存2施設のうち、同市西区のDCは、100%に近い稼働率となっている。福岡県志免町のDCも、令和2年度にはフル稼働になる見通しだという。
顧客は福岡県をはじめ、九州の自治体や金融機関、証券会社などが主だが、最近は中小企業からの引き合いも増加しているという。中小企業の活動にもICT(情報通信技術)が不可欠となったからだ。
さらに首都圏の企業が、九州、特に福岡都市圏のDCを利用するケースが増えた。
平成23年の東日本大震災以降、事業継続計画(BCP)の重要性がクローズアップされる中、企業はデータのバックアップ先として福岡に注目した。
福岡市は、文部科学省の地震調査研究推進本部の試算(平成30年版)で、今後30年間震度6弱以上の地震発生確率が8・2%と、横浜市(82%)や大阪市(55%)と比べて低い。津波リスクも低い。
半面、各種インフラが整っており、保守点検やシステム更新で不便は少ない。
QTnetの担当者は「首都圏の企業が、機器の更新時期に合わせて福岡のDCを使うケースが目立つ」と語った。同社のDCの「ラック」のうち、4割を首都圏企業が利用している。
DCのライバルが、クラウドサービスだ。
DCは企業がスペースや、そこにあるICT機器を借りて、データを保管する。管理は自社で行う場合と、DCに委託する場合がある。
これに対してクラウドは、ネットワーク経由でデータを預ける。ネットワーク上でデータ処理も可能となる。利便性から米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)を筆頭に、日本でも利用が広がる。
ただ、8月には関東地方にあるAWSの施設で大規模な通信障害が発生し、スマートフォン決済アプリ「ペイペイ」などが一時利用できなくなった。機密情報をクラウドで管理することへの懸念も根強い。
QTnet執行役員で法人営業部長の浅井希修氏は「将来的には、DCとクラウドのハイブリッド、共存が進むのではないか。未来を見据え、営業体制を強化し、顧客の獲得を進めたい」と語った。
一言コメント
大手ならではのビジネスだ。
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