リクナビ問題、20社超が自主的に購入を公表 リクルートの対応「危機意識足りず」
就職情報サイト「リクナビ」が就職活動中の学生の内定辞退率を予測したデータを企業に販売していた問題で、トヨタ自動車やりそなホールディングス(HD)といった20社超が、25日までに購入していたことを明らかにした。「就活のプラットフォーム」となっている同サイトを運営するリクルートキャリア(東京)が、個人情報の扱いをおろそかにしたうえ、再発防止策も示さず、問題は長期化。企業による「データ利活用」の歩みを鈍らせる可能性もある。
問題となったデータは、学生のサイト閲覧履歴などを基に、内定を辞退する確率を5段階で算出するもの。採用担当者が苦労して選考して内定者を決めたのに、辞退者がでれば採用計画が狂うという“悩み”の解消につなげることができる。特に人手不足で、学生の売り手市場にある中、企業の需要は大きい。
だが、リクルートキャリアは、サービス提供で学生本人の同意を一部で得ていなかった。問題の表面化を受け、8月5日にサービス停止を発表。38社が購入したことは明らかにしたが顧客である購入会社の社名は非開示としたままだ。
このため、購入企業が自主的に購入事実を公表する異例の事態となっている。
公表した各社はいずれも採用の合否判定にはこのデータを活用はしていない、としている。りそなHDが「内定を辞退しそうな学生にこまめに連絡するなどフォローに活用」していたように、合否判定後の内定辞退者を減らすため使用したと説明する。
しかし、「自分の知らないところで自身の個人情報が扱われていた」ことを苦痛に感じる学生も多い。ある企業の担当者は「同意を得たデータだという前提で購入しており、裏切られた思いだ」と不満をもらす。
また、京セラの広報担当者は「今後、今回の問題を内定者に説明する機会を設けることを検討したい」と語るなど、各社とも学生からの不信感がこれ以上大きくならないよう懸命だ。
一方、リクルート側の対応は不十分だ。リクルートキャリアは、会見などを開かず詳細も示さないまま。さらにリクルートキャリアや同社をグループに抱えるリクルートHDが、自らも同データを購入していたことが明らかになったのは、問題発覚から約2週間過ぎて、すでに十数社が公表した後だった。
産経新聞の取材にリクルートキャリアの広報担当者は「サイト上に複数あるプライバシーポリシーの一部で、今回のサービスに関する言及がなく、学生の同意取得が不十分だった」と説明。登録会員80万人を対象に、小林大(だい)三(ぞう)社長名で謝罪メールを送り、同意がないままデータを企業に提示されたかどうか調べられる特設サイトを通知した。
ただ、再発防止に対する具体策は示さない。リクルートHDの担当者は「一定規模までの事業の戦略は中間持ち株会社と事業会社に権限があり、HDに起案するものではない」とのスタンス。就活以外にも転職、美容、結婚情報などさまざまな個人情報を扱うグループで起きた問題として、重要性を認識していないような対応だ。
ITジャーナリストの石川温氏は「本人の意思を無視した形で個人情報を利用し、問題を起こしたことへの危機意識が足りない。極めて悪質だ」と批判する。
一言コメント
他はどこが購入したんだろう?
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