庭が崖に…「八方ふさがり」 復旧手つかず、苦悩の住民 豪雨被害、岡山の住宅地
- 事件・事故
- 2019年8月12日
西日本豪雨で土砂崩れが発生しながら、復旧の見通しすら立っていない住宅地が岡山市北区富原地区にある。高台のその一帯は、5軒の庭から先の敷地がコンクリート擁壁とともに崩落した。現場の状況から工事の難度は高いとみられ、1年以上手つかずのままだ。修復費用に対する公的支援の当てはなく、損害保険は適用外とされた。家屋が巻き込まれる二次災害の不安を抱えながら、住民は苦悩している。
現場は1970年前後に造成された住宅団地の一角で、土砂崩れは昨年7月7日早朝に発生。5軒並びの各家屋を残し、敷地が崩れた。窓を開けると“崖”の状態。家屋の基礎部分が流出した所もある。現在はブルーシートで覆っただけで、4軒がみなし仮設住宅などに移っている。
住民の依頼で現地調査した日本技術士会中国本部岡山県支部の小林昇さん=技術士、応用理学=によると、崩落範囲は延長60メートル、幅最大18メートル、高さ同10メートル。造成時に盛り土で形成した地盤が滑り、擁壁が倒壊したとみられ、大雨などで被害が広がることも危惧される。
小林さんの見解では、崩れて堆積した土砂や擁壁のがれきを撤去すると残存地盤が不安定になる恐れがある▽復旧箇所がかなりの高さになる▽強固な擁壁が必要―などの理由から難工事が予想される。
5軒全体での復旧に向け、住民らは土木関連の数社に打診してきたが、折り合いはつかなかった。作業の難しさに加え、大掛かりな工事が自治体や企業ではなく個人との契約になることなどがネックになっているとみられる。
業者が見つかっても多額の費用が掛かると考えられ、住民の悩みとなっている。家屋自体の状態から罹災(りさい)証明書はいずれも「半壊に至らない」の判定。全壊や大規模半壊などで給付される被災者生活再建支援金の対象にはなっていない。
住民らは再三、岡山市と協議してきたものの、宅地・擁壁の修復に対する支援制度が見当たらない。市開発指導課は「できる限り助言はしていきたいが、民有地で手の出しようがないのが現状」とする。
水災補償付きの火災保険に加入していた世帯でも、家屋の被害ではないとして適用されないという。家族4人で仮住まいを余儀なくされている理容師冨田茂さん(37)は「1年以上、奔走してきたが、八方ふさがり。個人の力ではどうにもならない。助けてほしい。安心した生活を取り戻すための良策があれば教えてほしい」と訴える。
一言コメント
かといってこのまま放置するわけにはいかない。
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