ヤマトHDが大赤字 値上げしたのになぜ?
- 企業・経済
- 2019年8月10日
宅急便の大幅値上げで利益が増えているはずの宅配大手ヤマトホールディングスが赤字決算となっています。20%以上の値上げを実施したにもかかわらず、なぜ同社は赤字になっているのでしょうか。
ヤマトホールディングスが7月31日に発表した2019年4~6月期決算に市場関係者は驚きの声を上げました。大幅な値上げで収益が改善していることが予想されていたにもかかわらず、61億円の営業赤字となっていたからです。同社はネット通販など大口顧客からの配送依頼をさばき切れず、現場が疲弊するなどの混乱が発生。大量の配送要員を確保する必要に迫られました。働き方改革を支持する世論の後押しもあり、同社は個人向けの配送料金の値上げに踏み切り、法人向けの料金についても段階的に値上げを進めてきました。その結果、宅配料金は全体として2割ほど上昇し、同社の収益は大きく改善するはずでした。
2019年3月期の通期決算では営業利益が63.5%増と増収増益となりましたが、それもつかの間、第1四半期の決算は早くも赤字に転落するという有様です。市場からは「何のための値上げだったのか」と同社の経営を疑問視する声が出ています。
前年同期と比較して宅配便の単価は4.8%も上昇しており、本来であれば、その分だけ売上高と利益が増えていなければなりません。しかしながら、売上高(営業収益)はほぼ横ばいとなり、コストをカバーしきれず赤字転落となりました。同社では、働き方改革の整備に必要な費用が増加したことが主な原因としていますが、それだけではないようです。宅配便の取扱数量は3.6%のマイナスとなっており、中でも大口法人の取扱数量が8.2%と大幅に減っています。具体的な取引先はあきらかにされていませんが、取扱量を減らしたのはネット通販事業者である可能性が高いでしょう。
アマゾンなどネット通販事業者は、ヤマトの値上げ騒動などをきっかけに、配送を外部の運送会社に依存していることのリスクを強く認識するようになり、一部の事業者は自前の配送網の構築に乗り出しています。ネット通販事業者は大手の運送会社に依存しない体制となりつつありますから、場合によっては、今後も大口の取扱量があまり伸びない可能性もあるわけです。ヤマトは体制強化のため、従業員を2万人以上も増やしましたが、逆にこの人件費が業績の足かせとなるかもしれません。
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