「きのこ雲」後方 串木野空襲の煙 長総大・大矢名誉教授ら特定 「終戦直前まで全土に空襲」
- 政治・経済
- 2019年8月10日
米軍機が長崎原爆の投下直後に撮影した「きのこ雲」の映像に、米軍が原爆投下の約1時間前に鹿児島西部の旧串木野町(現いちき串木野市)を空襲した際に発生した黒煙が、写り込んでいることが分かった。長崎総合科学大の大矢正人名誉教授らが特定した。
大矢氏は「終戦直前まで日本全土に空襲が広がっていた」と話している。
大矢氏らは2014年、米軍が長崎原爆投下直後に上空約9キロから「きのこ雲」を撮影した約3分間の映像を米スタンフォード大のフーバー研究所から入手。映像を活用し、きのこ雲を撮影した米爆撃機B29の飛行ルートを割り出した。
大矢氏らは研究過程で、きのこ雲の右後方に写り込んでいる小さな黒煙に着目した。当初は鹿児島・桜島の噴煙と推測したが、当時の気象記録では1945年の噴火は確認できなかった。
大矢氏と長総大の学生チームは、きのこ雲後方に映る陸地の海岸線や島の形状を、米グーグルの衛星写真を利用したサービス「グーグルアース」のデータと照合。黒煙の発生場所は、長崎から直線距離で約110キロ南東の旧串木野町付近と突き止めた。
大矢氏らは串木野の記録を調査。「串木野驛(えき)史」によると、45年8月9日午前10時8分以降、米軍機計39機が串木野に来襲し、機銃掃射や焼夷(しょうい)弾で攻撃していた。入手した米軍の報告書にも、同日午前10時5分から10分間、串木野を空襲し、米軍機パイロットが空襲後に約1・8キロ上空まで立ち上る煙を確認したことが記されていた。
大矢氏らがグーグルアースを用いて映像を分析した結果、串木野空襲の黒煙は、原爆投下時刻の午前11時過ぎに約3・4キロ上空まで達していたと推定された。これらの調査結果を総合的に判断し、きのこ雲後方の黒煙は串木野空襲により発生したものと特定した。
大矢氏によると、連合軍は日本が降伏しなかった場合、11月に九州南部から上陸する作戦を計画しており、同地域沿岸部の制圧が必要だったため、作戦前に串木野も空襲したとみられるという。
大矢氏は「全国各地の空襲体験と原爆被害を関連づけて、平和の大切さを伝えていく視点が今後は重要になる」と話している。
一言コメント
平和のためには事実を知ることも大切だ。
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