高校野球で商業・工業高校が勝てない時代に今年は異変発生
- スポーツ
- 2019年8月7日
スポーツ強豪校といえば資金が潤沢で、全国から強豪選手を集めやすい私立というイメージが強い。高校野球の世界でも全体的にその傾向は強いが、今年は広島商、熊本工など伝統ある公立校が甲子園出場を次々と決めた。ノンフィクションライターの柳川悠二氏が、14校出場する公立高校の注目ポイントをレポートする。
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昨年、甲子園で旋風を巻き起こした金足農業がファンの心を打ったのは、マウンドをひとりで守った吉田輝星(現日本ハム)というスターの存在と共に、金足農業が公立高校だったことが背景にある。
2017年夏の甲子園は49代表校のうち公立は8校。100回の記念大会で、55代表校だった昨年も同じ8校。少子化や野球人口の減少によって、豊富な資金力のある私立に、有望選手が集まる傾向は年々、強くなっている。結果、高校野球の草創期から昭和にかけて、甲子園で活躍した商業・工業高校が勝てない時代となっているのだ。
ところが、今年は異変が起き、公立校が一気に14校にまで増えた。中でも、春1回、夏6回の優勝実績のある伝統校・広島商の復活は象徴的な出来事だった。
近年は広陵、広島新庄など、私立の後塵を拝し、夏の甲子園からは15年も遠ざかっていた。昨春に発覚した不祥事を受け、監督に就任した荒谷忠勝監督は、選手に一日1000スイングの猛練習を課すことで立て直しに着手し、伝統の機動力にパワーを加えた。今大会前にはOBの達川光男氏が母校を訪れ、指導にあたったという。荒谷監督は勝因をこう話した。
「いろんな広商関係者が支えてくれて、選手も伝統を守り、温故知新で頑張ってくれた。それに尽きます」
熊本工業も6年ぶりの夏の甲子園切符を掴み、高松商業(香川)に至っては夏は23年ぶり。小柄な左腕・香川卓摩には鋭いスライダーがあり、センバツで甲子園のマウンドを経験しているのも強みだ。
同じく今春のセンバツに出場した習志野(千葉)と明石商業(兵庫)は、優勝も狙える位置につける。
習志野は、何事にも動じないエース・飯塚脩人(しゅうと)の球速が150キロに達し、準優勝に終わった春の雪辱を期す。風物詩となったブラスバンド応援は、聖地でこそ耳に入れるべき美爆音だ。
明石商業は、右腕の中森俊介に加え、“藤原恭大二世”とも呼ばれる来田(きた)涼斗が1番を打つ。センバツの準々決勝・智弁和歌山戦で、先頭打者弾とサヨナラ本塁打を放ち、名を轟かした。ふたりは共に2年生だ。
習志野と明石商業は共に市立で、県立に比べれば手厚い支援を受けている。それでも甲子園制覇となれば、公立校の快挙として讃えられるはずだ。
※週刊ポスト2019年8月16・23日号
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ハングリー精神が原因!?
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