シニア女性がQR決済に尻込みする“二つのハードル”
- 政治・経済
- 2019年8月5日
スマホ決済サービス「7pay」の不正利用問題などでQRコード決済が注目を集めています。そうした中、シニアは、キャッシュレス決済の利用率は意外なほど高いものの、QR決済の利用には尻込みしている様子が見て取れました。株式会社ハルメクの生きかた上手研究所所長・梅津順江さんがシニアの声を集めリポートします。【毎日新聞経済プレミア】
◇シニアがQR決済尻込み”二つの不安”
私が所属する「ハルメク 生きかた上手研究所」は今年3月末、55~79歳の女性230人に「キャッシュレス決済に関するアンケート」をウェブ上で行いました。クレジットカード、VISAなどのブランドがついたプリペイドカード、Suicaなどの電子マネー、QR決済などの利用状況を聞きました。キャッシュレス決済の利用率は意外なほど高かったものの、そのうちの一つのQR決済の利用には尻込みしている様子が見て取れました。
◇キャッシュレス決済の利用率は9割超
キャッシュレス決済を利用したことがあると答えた人は224人(97.4%)にのぼり、ほとんどの人が何らかのサービスを使っていました。
利用者はキャッシュレス決済の利点について、支払時にもたつかない▽財布が小銭で膨らまない▽ポイントがつくお得感──の三つを感じていました。「レジでもたもた現金を数える老人は恥ずかしい」といったコメントが散見され、普段の買い物など身近な場所でキャッシュレス決済が使えるようになり、「他人のふり見て我がふり直せ」といった思いで利用し始めるケースも多いようです。
利用したことがあるサービスを上位から並べると(複数回答可)、電子マネーが222人(96.5%)、クレジットカードが206人(89.6%)、プリペイドカードが69人(30.0%)、QR決済が19人(8.3%)でした。
◇QR決済に懐疑的?
最近参入が相次ぎ、プレゼントやポイント還元などのキャンペーンが行われるQR決済は、シニア層ではまだまだ広がりに欠けます。QR決済については利用する(しない)理由も聞きました。その理由を分析すると、利用者19人の中で「積極的に使う」が10人、「消極的か利用をやめた」が9人でした。
積極的に使う人からは「決済に時間がかからず便利」「たまったポイントでちょっとしたぜいたくができる」といった声があがりました。もう一方の9人からは「便利だが怖さも感じる」などセキュリティーに対する不安の声が複数ありました。また「使える店がまだ少ない」「ついつい使いすぎてしまった」といった理由をあげる人もいました。
一方、利用したことがない211人の理由を分析すると、利用するかどうか迷っている様子見の人が91人、QR決済自体を否定的に捉えている人が55人、どういうものかわからない人が35人、いずれは利用したい人が30人いました。
様子見の人は、QR決済の便利さを理解しているものの「消費増税までには使えたらいい」「簡単に安心して使えるようになれば」と言います。否定的な人は「スマホをなくした場合に心配」「情報漏えいが不安」と感じていました。わからない人は「登録の仕方も使い方もわからない」「とてもついていけない」と途方に暮れている様子でした。
シニア女性の間でQR決済の利用が広がらないのには理由があります。この年齢層ならではの二つの不安がハードルになっているからです。
一つは「アプリの設定が面倒」「操作が難しくてわけがわからなくなりそう」といったスマホを使いこなせない不安です。「画面の操作に手間がかかって店員を待たせることが恥ずかしい」という意見もありました。もう一つは「残高管理ができず、いくら使ったかわかりにくい」「使い過ぎる心配がある」といったお金の管理への不安です。
◇損得勘定が利用を促す動機に
QR決済はシニア層には受け入れられないのでしょうか。この年代の人の多くは「周囲の評判を聞いてから」といった理由で慎重な消費行動をしがちです。また、セキュリティーに対しても厳しい目を向ける傾向があります。
実際に利用するには、確固たる動機も重要です。例えば、シニアがスマホを持つきっかけとしてよくあがるのが、自然災害の経験や海外旅行の準備、操作を教えてくれる子供が家を出る前に、といった理由です。現在であれば、10月の消費増税が、QR決済を利用し始めるポイントになるでしょう。増税に合わせてポイント還元が行われますが、知らないと損をするQR決済の使い方といったことには高い関心があります。最近私たちが行ったある座談会でも「使うかどうかわからないが、QR決済を知っておきたい」「増税で損をしたくない」といった声がありました。損得勘定は、利用を促す動機になり得ます。
また、シニア層はモノやサービスを「使って便利」と思えば、同じものを長く使い続ける傾向があります。シニア市場を攻略するには、使うきっかけとなる強い動機付けと、シニアでも理解できるわかりやすさが大切です。
一言コメント
決済方法が増えすぎている気もする。
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