保育所詐欺、被害10億円超か 企業型助成金、開設は半数以下
- 詐欺・悪徳商法
- 2019年7月29日
内閣府の企業主導型保育事業をめぐり、国の助成金約2億円をだまし取ったとして保育コンサルタント会社代表が再逮捕された事件で、この代表らが申請を代行し、助成が決まった保育施設は過去3年間で22施設に上る一方、開園に至ったのは約半数しかないことが28日、関係者への取材で分かった。申請1件当たり数千万円の助成金を受けたとみられ、詐取総額は10億円近くに上る可能性がある。東京地検特捜部は実態解明を進めている。
■景気のいい文言
「2020年までに直営店150店舗を目指し、全国で1万人以上の園児を幸せに」。福岡市の保育コンサルタント会社「WINカンパニー」は企業主導型保育事業の申請代行を手掛け、「KIDSLAND(キッズランド)」という名称の保育施設を展開。昨年4月に作成したとみられる企業向けの勧誘資料にはこうした景気のいい文言が記載されている。この時点で計画段階も含めた施設数は33。「レストラン・カフェ併設」「ジャングル調」「リゾート施設のような外観」…。鮮やかな完成予想図がずらりと並ぶ。
このうち福岡市と名古屋市の2施設について、WIN社の代表取締役、川崎大(だい)資(し)容疑者(51)=別の詐欺罪で起訴=らは審査を担当する公益財団法人「児童育成協会」(東京)に虚偽の契約書を提出するなどして助成金計約2億700万円をだまし取った容疑で23日に逮捕された。
同協会の資料などによると、事業開始の平成28年度からの3年間にWIN社が関わったとみられる申請は東京、福岡などの各都市で計約40施設あり、うち22施設で助成が決定。だが、実際に整備され、開園に至ったことが確認できるのは9施設にとどまる。それ以外は建設がストップしているとみられ、中には申請を取り下げたケースもあった。
■匿名ブログ機に
子供が保育所に入れなかった怒りを「保育園落ちた日本死ね」と書き込んだ匿名ブログをきっかけに、国会で待機児童の問題が改めてクローズアップされる中、政府が対策の目玉として3年間に計約3800億円の巨額予算を投入したのが今回の企業主導型保育事業だ。児童育成協会の審査を経ると整備費の4分の3や運営費が支給される。
一方で同事業は「審査が緩く、助成は認可並みに手厚い」(政府関係者)とも指摘され、助成決定後に契約書などを提出すれば最大半額が事前に支給される。28、29年度は支払いを証明する書類がなくても受給できた。
川崎容疑者はここに目を付けた。まず設置予定地を確保し、自身が実質支配する会社名で助成申請を出す。決定後に運営企業が確保できれば名義変更する。川崎容疑者は逮捕後、「申請側の挙手を待っていたらスピード感がない」と周囲に語ったという。だが、整備予定地を維持しておくための賃料は「月1500万円程度」(関係者)に上り、WIN社の経営は自転車操業状態に陥っていた。
■「信じたのに…」
かつてビジネスパートナーだったという男性は3年前、川崎容疑者が「自分には子供がいる。全国の子供たちのためにまっとうな仕事をしたい」と熱っぽく語っていたのを覚えている。
川崎容疑者は「塩田大介」の名前でマンション販売会社「ABCホーム.」の会長だった。21年に法人税法違反罪で執行猶予付き判決を受け、25年には競売入札妨害罪で懲役1年4月の実刑判決となった。男性は、前科を自ら明かして再出発を誓う川崎容疑者とともに会社を設立したが、会社資金の私的流用が判明し、たもとを分かった。
男性は「カネの使い方がどんどんエスカレートしていき、いずれ事件を起こしかねない人間だと思った。やり直そうとしていたから協力したのに裏切られた」と話す。川崎容疑者と関わったことがある別の会社社長は「本当に詐欺のプロ。誰もが1回目は信じてしまうだろう」と話した。
一言コメント
怪しい会社が補助金や助成金を得ていることはよくある。
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