文氏も驚きだった米朝会談、「歴史的出来事」と称賛
- 国際
- 2019年7月1日
【ソウル=名村隆寛】板門店で初めて米朝首脳が会ったことは、米朝の仲介役を自負する韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領にとって「握手する姿だけでも非常に歴史的な出来事」と評価するほど喜ばしいことだったようだ。
2月末の米朝首脳会談が物別れに終わって以来、文在寅政権の対北融和政策は行き詰まり、北朝鮮側からも「仲介役」であることを否定された。国際社会で相手にされない韓国では“韓国孤立論”という言葉さえ普通に飛び交っていた。
板門店での米朝首脳の対面を前に、韓国の政府関係者やメディアは「南北米首脳会談」と称し、韓国の存在意義にこだわっていた。しかし、トランプ米大統領に同行した文氏は、前面には出ず、あくまでも脇役・仲介役に徹した。金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長とは短く言葉を交わし、米朝両首脳を笑顔で見守っていた。
トランプ氏と一緒に、金正恩氏を軍事境界線の北側に見送った文氏は「(北朝鮮の)非核化プロセスは一つの峠を越えた」と満足そうに語っている。文氏が評価したように、板門店から「歴史的な光景」が世界に発信されたことは事実だ。
昨年の南北首脳会談やシンガポールでの初の米朝首脳会談も当時、「歴史的」と注目され、もてはやされた。だが、肝心の北朝鮮の核問題をめぐって実質的な進展は現在もない。歴史的な場面を見せる効果はあるものの「成果」は別のものだ。これまで米朝と南北は「平和のための握手」(文氏)とその光景の発信を繰り返してきたが、目立った成果はない。
トランプ氏が前日、金正恩氏と会う意思をツイッターで表明したことは、金正恩氏の言葉通り、南北両首脳にとって驚きだったようだ。文氏は「トランプ大統領の提案で米朝首脳の対面が実現した」とトランプ氏を激賞し、感謝している。
トランプ・金正恩効果によって、韓国国内での文氏の支持率は一時的に回復することが予想される。しかし、文政権には経済や雇用など内政での難題が山積している。また、米国による中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)排除の問題などで、韓国が今も米中の板挟み状態にあることにも変わりはない。
大阪での20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)よりも注力した米韓首脳会談の末に、思わぬ成果を得た様子の文氏だが、今後の見通しは必ずしも楽観できるものではない。
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