悲願のネット配信、変容するNHK 民放は肥大化を警戒
- 政治・経済
- 2019年5月30日
NHKのテレビ番組がつねに放送と同時にネットでも見られるようになる改正放送法が29日、成立した。NHKは悲願だった常時同時配信を今年度中に始め、公共放送から「公共メディア」を目指す。ただ、業務拡大への民放の懸念やネット時代の受信料体系の議論など、積み残しの課題もある。
NHKが同時配信に乗り出す方針を表明したのが2010年。10~20代を中心にネットの利用時間がテレビの視聴時間を上回り、米国発のネットフリックスやアマゾンなど、動画配信サービスもテレビ離れに拍車をかける。高速で大容量の次世代通信規格「5G」も来年から本格的に始まり、NHKが「放送を太い幹としつつ、インターネットを補完的に活用して視聴機会の拡大を目指す」(上田良一会長)ことは自然な流れだった。
とはいえ、約7千億円の受信料に支えられたNHKの業務拡大に懸念はつきまとう。採算度外視のサービスを展開すれば、日本テレビ傘下の「Hulu(フールー)」やテレビ朝日が出資する「Abema(アベマ) TV」など、試行錯誤しながら収益化を目指す民放の動画配信ビジネスに大きな脅威となるからだ。
日本民間放送連盟(民放連)はNHKがネット事業に使える費用の上限を、現在の「受信料収入の2・5%」に収めるよう求めるなど、抑制的な運用を求める。日テレの大久保好男社長も27日の会見で「補完業務である配信業務の事業費が無制限に拡大すれば、民放事業者から見て、NHKの肥大化につながる」と述べた。
ただ、牽制(けんせい)一辺倒だった民放にも変化が。民放は同時配信に法の制限はないものの、「採算性がない」として実施は限定的だった。しかし、最近では「NHKが始めれば、みんな見るようになる。やらざるを得なくなる」(民放幹部)といった声も漏れる。
TBSの佐々木卓社長は29日の会見で「同時配信の実証実験を重ね、視聴者ニーズ、ビジネスの点を慎重に検討していく」と言及。関係者によると、在京民放5社が共同で始めた番組配信サイト「TVer」で、5社のニュース番組を同時配信する実証実験も近く予定されているという。
一言コメント
もうこれは時代の流れだろう。
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