あわや初の南海トラフ臨時情報 「気持ちの悪い」日向灘の地震
- 政治・経済
- 2019年5月11日
10日午前8時50分ごろ、宮崎県沖の日向灘を震源とするマグニチュード(M)6.3の地震が発生し、宮崎市や同県都城市で震度5弱を観測したほか、近畿~九州地方にかけて震度4~1の揺れを観測した。これまでのところ、大規模な被害は確認されていないようだが、今回の地震は別の意味で報道陣の注目を集めた。それは、南海トラフ巨大地震との関係の有無だ。
気象庁によると、この地震が発生したのは、南海トラフ巨大地震の想定震源域の西端。震源の深さは25キロで、想定されている南海トラフ巨大地震と同様、陸のプレート(岩板)とフィリピン海プレートの境界付近で発生したと考えられる。
南海トラフの想定震源域または周辺でM6.8以上の地震が発生した場合、気象庁は「南海トラフ地震臨時情報(調査中)」を発表。その後、有識者からなる「南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会」を開き、そこで起こった現象を評価し、さらなる南海トラフ地震の発生に対する警戒を呼び掛ける情報を出すしくみがある。
もし、この臨時情報が発表されれば初めてのケースとなったが、今回は、地震の規模がM6.8という調査開始の基準を満たしていないことから、評価検討会を臨時で招集する事態とはならなかった。しかし、「もしかしたら…と考えさせられるケースで、その意味では少し気持ち悪い地震。改めて臨時情報が発表された時にあわてないようにしておく必要性を感じた」(気象庁関係者)との声も聞かれた。
ところで、初の臨時情報にはならなかったが、今回の地震が起きた南海トラフの想定震源域の一部である日向灘ではどのような地震が発生すると考えられているのか。
政府の地震調査研究推進本部によると、日向灘ではM7.6前後の規模の地震のほか、ひとまわり小さいM7.0~7.2程度の規模の地震が発生することが知られている。M7程度の地震の多くは、今回の地震と同様、陸のプレートとフィリピン海プレートの境界で発生するプレート間地震だという。この規模の地震としては、1961年の地震(M7.0)、「1968年日向灘地震」(M7.5)及び1984年の地震(M7.1)などがあり、こうした地震が十数年から数十年に一度の割合で発生しているという。
また、気象庁によると、日向灘の中でも今回の地震とほぼ同じあたりで1931年にM7.1の地震が発生しているほか、1996年にはM6台後半の地震が2回発生している。
今回の地震が、日向灘で想定されている最大規模のM7級の地震や、さらに東の領域の南海トラフ地震につながるかどうかを現状の科学で予測することはできない。しかし、日向灘では過去にこうした規模の地震が数多く発生していることや、東日本大震災発生の2日前に今から考えると「前震」と位置付けられる地震が発生していたことなどを踏まえると、「可能性はゼロではない」と考えて、地震に対する備えの見直しなどを行いたい。
なお、気象庁の中村課長は記者会見で、「過去の事例では大地震発生後に同程度の地震が発生した割合が1~2割ある。揺れの強かった地域では地震発生から1週間程度、最大震度5弱程度の地震に注意してほしい。特に、今後2~3日程度は規模の大きな地震が発生することが多くある。海域で発生する地震の場合、規模が大きくなれば津波が発生するので注意してほしい」と警戒を呼び掛けている。
飯田和樹/ライター・ジャーナリスト(自然災害・防災)
一言コメント
何れにしても、備えは必要ということだ。
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