北海道で震度7を観測した地震や西日本豪雨など、去年、各地で相次いだ自然災害。こうした中、被災した人が「火災保険や地震保険の請求をサポートする」などと業者から勧誘され高額の手数料などを請求されるトラブルが急増していることが分かりました。全国の消費生活センターに寄せられた相談は10年前の50倍近くに上っていて、国民生活センターが注意を呼びかけています。

去年は北海道で震度7を観測した地震や大阪府北部の地震、それに西日本豪雨などの自然災害が相次ぎ、住宅などに大きな被害が出ました。

こうした中、被災した人が『火災保険や地震保険が出るように請求をサポートする』などと勧誘されて業者と契約し、高額の手数料を請求されたり、『保険金を使えば自己負担なく住宅の修理ができる』などと勧誘され、実際に受け取った保険金の額を上回る多額の工事代金を請求されたりするトラブルが急増していることが、国民生活センターへの取材で分かりました。

昨年度、全国の消費生活センターなどに寄せられたこうした相談は1747件に上り、10年前の48倍に急増しているということです。

中には被災地以外の人に「自然災害で住宅が壊れたことにして保険金を請求しませんか」などと勧誘する悪質な業者もいるということで、地震保険などの知識が十分ではない高齢者からの相談が多いということです。

国民生活センターの岩崎直子さんは「大規模な自然災害が続いた中で被災者の不安につけ込む悪質なケースが増えており、業者に高額の手数料を支払ってしまうと住宅の修理が十分にできなくなってしまう。業者に勧誘されてもすぐには契約せず、保険会社に相談してほしい」と呼びかけています。
【「手数料45%」請求された例も】熊本市に住む72歳の女性は3年前の熊本地震で自宅にひびが入るなどの被害を受けました。

地震の翌年、地震保険に加入していることを知った知人から「国の予算が余っているから、もらえるものはもらわないと損だ」などと何度も勧められ、東京の業者を紹介されたということです。

業者は女性の自宅の被害の状況を10分ほど確認したあと、「住宅の半壊で保険金がもらえるようにする」と話し契約書にサインするよう求めてきたということです。

その後、女性には地震保険の保険金560万円余りが支払われましたが、契約書には『受け取った保険金の45%を業者に支払う』と書かれていました。

このため女性は業者から250万円余りの支払いを求められ、支払いを拒否すると業者から裁判を起こされたということです。

受け取った保険金から250万円余りを業者に支払えば自宅の修理に充てるお金が足りなくなってしまうため、地震から3年たった今も修理ができないままになっているということです。

女性は「業者から契約書にサインするようせかされたので言われるがままに署名してしまったが、業者からサービスや契約の内容などの詳しい説明を受けた覚えはない。せっかく保険金を受け取っても業者に手数料を支払えば修理のお金が足りなくなってしまう」と話していました。
【「地震保険はもうかる 悪質業者増える]】地震保険の請求をサポートするビジネスをしている男性は、NHKの取材に対し「去年、大規模な災害が相次いだことで地震保険ビジネスに参入する悪質な業者が急激に増えている。中には『地震保険はもうかる』などいってビジネスのやり方を教えるコンサルタント業者や、地震保険の加入者を業者に紹介して手数料を受け取る人も存在している」と証言します。

その背景について、男性は「地震保険は50年以上前からある制度だが、東日本大震災が起きるまで実際に請求するケースはそれほどなかったため、保険への正しい知識を持っていない人が多い。こうした状況につけ込み、あたかも業者を通さないと保険が申請できないようなうその説明をして多額の手数料を受け取っている悪質な業者が増えている」と話しています。
【日本損害保険協会「まずは相談を」】日本損害保険協会は「地震などの自然災害のあとは、住宅修理サービス関連のトラブルが多くなります。『保険の申請を代行する』などと勧誘する業者が来てもすぐに契約はせず、まずは加入先の損害保険会社や代理店に相談してください」と注意を呼びかけています。