リクシル 辞意の潮田CEOと前任・瀬戸氏 子会社巨額損失の責任“なすりつけ合い”
- 企業・経済
- 2019年4月19日
トップ交代を巡るお家騒動に揺れる住宅設備大手のLIXIL(リクシル)グループの潮田洋一郎会長兼最高経営責任者(CEO)は18日、辞任の意向を表明した。潮田氏は同日発表した子会社の巨額損失の責任は、対立する前CEOの瀬戸欣哉氏にあると批判。瀬戸氏をトップに任命した自らの責任を辞任の理由に挙げたが、瀬戸氏は真っ向から反論し、内紛はなお収まりそうもない。
潮田氏は同日、東京都内で記者会見し、5月20日開催予定の取締役会で取締役を辞任し、6月の定時株主総会後に会長兼CEOも退任すると表明した。山梨広一社長兼最高執行責任者(COO)も株主総会後に取締役を退任すると発表した。
リクシルは、創業家(旧トステム)出身の潮田氏が招いた「プロ経営者」の瀬戸氏が2016年6月に社長兼CEOに就任したが、海外戦略などをめぐって対立。昨年10月に瀬戸氏を社長兼CEOから外し、潮田氏が会長兼CEOに、社外取締役だった山梨氏が社長兼COOに就任する人事を発表した。しかしこの人事を巡り、海外の機関投資家が「ガバナンス(企業統治)に重大な疑念がある」と指摘し、潮田、山梨両氏を解任するよう要求。瀬戸氏も「辞めたいと話したつもりはない」として、CEO復帰を目指す考えを示している。
潮田氏はこれらの人事の問題について「何ら瑕疵(かし)はないと弁護士のお墨付きを頂いている」と断言。辞任の理由に挙げたのが子会社の巨額損失の計上だった。
リクシルは18日、11年に買収したイタリア子会社の採算悪化に伴い減損損失を計上するなど、19年3月期の通期連結の最終(当期)損益が530億円の赤字(従来予想は15億円の黒字)に転落する見通しになったと発表した。潮田氏は会見で「今回の赤字は前CEO(の瀬戸氏)がもたらしたもの。私が瀬戸氏を招いたのは失敗だった」と痛烈に批判。「本来なら瀬戸氏が責任をとって発言すべきだが、彼は退任しているので、私が任命責任をとる」と述べ、今回の辞任はあくまで瀬戸氏をトップに据えたことへの自らの責任を取るためであることを強調した。
この海外子会社はイタリアに本社を置くビル外壁の設計・施工会社で、この分野では世界最大手とされる。潮田氏は「この業界では宝石と言われた会社を瀬戸氏が石ころにしてしまった」と、皮肉たっぷりに述べた。【川口雅浩】
◇CEO復帰目指す瀬戸氏「この会社が潮田さんと決別する時」
巨額損失の責任は瀬戸氏にあるとの潮田氏の主張に対し、瀬戸氏も18日に報道陣の取材に応じ、真っ向から反論。新旧トップによる「責任のなすりつけ合い」の様相を呈した。
瀬戸氏は「今回損失を出したプロジェクトの90%程度が(自身の就任前の)15年以前のプロジェクト」とし、「子会社は潮田さんが買われたビジネスで、もっと早くこの事業から撤退できればよかったが、社内事情で困難だった」との認識を示した。また、子会社のリスクについて「文書でも口頭でも何度も潮田氏に報告した」と責任を追及した。
瀬戸氏は、5月下旬の開催が検討される臨時株主総会前の潮田氏の辞任表明についても疑問を呈した。総会では、機関投資家が求める潮田、山梨両氏の解任議案が諮られる予定だ。瀬戸氏は議案可決に自信を示しており、「業績悪化を理由とした辞任で、臨時株主総会を回避しようというのは話のすり替えだ」と批判した。リクシルは同日、臨時株主総会について「5月下旬に開催することが可能となるよう関係者との調整等を鋭意進めている」としたが、両氏が辞任を表明したことで、機関投資家側の出方が注目される。
瀬戸氏は6月の定時株主総会で、自身を含む8人の取締役候補を株主提案する意向で、CEOに復帰することを目指している。旧INAX創業家の伊奈啓一郎取締役とともにリクシルに対し、株主提案の書面を送ったことを明らかにし、「私はこの会社が潮田さんと決別する時が来たと考えている。取締役、CEOとなり、この会社のガバナンスを改革し、成長に導こうと考えている」と意欲を述べた。
これに対し、潮田氏は「私が申し上げていることは大きく外れていないと思う。瀬戸さんの問題を(株主の)皆さんがどう判断されるかだ」と述べ、巨額損失に対する瀬戸氏の責任を厳しく問うよう株主に求めた。潮田氏が今回、自らの辞任の理由として子会社の損失を持ち出したのは、「一義的な責任は瀬戸氏にある」としてCEO復帰を阻む狙いがあるとみられる。
6月の定時株主総会では、会社側が新たに提案する取締役候補も注目される。リクシルは指名委員会が取締役候補を選任するが、ポスト潮田・山梨体制の人選はこれからだ。会社側の提案と株主総会の行方しだいでは、潮田氏が今後も経営に何らかの形で影響力を保持する可能性も残る。山梨氏も「仮に総会以降、執行を続けろと言われた場合、執行に専念したいので取締役には残らない」と述べ、何らかのポストにつくことに含みを残した。
ただ、新旧トップが赤字計上を巡って責任を押しつけ合う姿は投資家や消費者の失望を呼び、リクシルのブランド価値を一層傷つけることになりかねない。一日も早い対立の解消と経営の正常化が求められる。
一言コメント
早く収束しないと企業イメージも悪くなるよ。
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