巧妙手口、仮想通貨悪用も=脱税小口化、告発6分の1-マルサ苦闘の30年
- 政治・経済
- 2019年4月14日
平成の30年間、経済取引の透明化が進んだ。
バブル時代に不正蓄財の手段として使われていた割引金融債はなくなり、偽名口座も減少。一方で、仮想通貨が悪用されるなど、脱税手段は巧妙化している。国税局査察部(マルサ)が告発する事件は小口化し、摘発総額はピーク時の6分の1に落ち込むが、国税庁幹部は「時代が変わっても脱税する人間はいる。マルサは最後のとりでだ」と力を込める。
映画「マルサの女」が日本アカデミー賞の主要部門を総なめにしたのは、平成が始まる1年前の1988年。脱税に奔走する企業経営者と査察部の攻防を描いた映画のヒットで、マルサの認知度は一気に高まった。
地価や株価が値上がりを続けたバブル景気の真っただ中で、88年度に告発した事件の脱税総額は627億円。1件当たりの脱税額も3億6700万円といずれも過去最高額で、この30年間で一度も塗り替えられていない。
当時、資金隠しには金融機関が発行する割引金融債が使われることが多かった。無記名で購入者が特定しづらい上、多額の現金を1枚の証書に変えられる「利点」があった。
金丸信・自民党元副総裁(故人)も大量の割引債を保有。マルサの情報を基に、東京地検特捜部が93年、所得税法違反容疑で電撃逮捕した。
東京国税局査察部で88年から17年間勤務し、著作もある税理士の上田二郎(筆名)氏は「割引債の調査はマルサの原点。購入者割り出しのため半年間尾行を続けたこともある」と話す。
バブル崩壊後、借名や仮名口座も減った。マネーロンダリング(資金洗浄)対策で2003年に本人確認法が施行され、金融機関で確認が義務付けられたためだ。
一方、取引の国際化でタックスヘイブン(租税回避地)を使った脱税が増え、匿名性の高い仮想通貨も悪用されるようになった。こうした事情もあり、17年度に国税当局が告発した事件の脱税総額は100億円と、88年度の6分の1以下に。1件当たりも8900万円に落ち込んだ。
マルサの苦戦は、パソコンやスマートフォンなどの普及で、証拠解析に膨大な時間がかかることも背景にある。上田氏は「巨額資金を持つ人間の不正を暴きにくくなっている。国税庁は情報の端緒となる内部通報を発掘する必要がある」と語る。
一言コメント
やってそうな会社は結構あるけどね。
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