米国警備艦が北朝鮮の「瀬取り」監視で異例の韓国入り 韓国への警告の意図も?
- 国際
- 2019年4月3日
■ 佐世保から済州島へ移動
「バーソルフ」は、米沿岸警備隊の駆逐艦クラスの主力大型艦。同艦は今年1月20日に母校のカリフォルニア州アラメダ港を出港し、西太平洋で警備や米海軍艦のサポート任務を行った後、東シナ海に進出して北朝鮮による「瀬取り」の監視任務に就いた。3月3日に長崎県の米海軍佐世保基地に入港し、26日には韓国・済州島に転進した。韓国メディアの報道によれば、28日に同島沖の公海上で韓国海警(沿岸警備隊)の大型警備艦と合同訓練を行った。「バーソルフ」は、引き続き朝鮮半島周辺に留まり、瀬取りの監視任務に就くとみられる。
この訓練は、表向きは以前から予定していた麻薬取引を行う船舶の合同検問検査訓練ということになっているが、韓国・朝鮮日報などは、実態は北朝鮮の石油・石炭などの瀬取りに対する牽制を兼ねた訓練だと指摘している。瀬取りとは、洋上で船から船へ積荷を移し替える行為のことで、現代では主に、覚醒剤の密輸などで当局の監視の目を逃れる手段として用いられる。
北朝鮮は、国連安保理による経済制裁により禁輸措置が取られている石油をこの瀬取りによって手に入れ、主要輸出品の石炭を輸出して外貨獲得の手段にしていると言われる。米政府は、北朝鮮は昨年、認められている量の7倍半もの石油製品を輸入したようだと指摘。米国務省と沿岸警備隊、米財務省外国資産管理局(OFAC)がまとめた最新情報によれば、北朝鮮は外国船籍の石油タンカーからの瀬取りによって少なくとも263回石油製品を受け取ったという(ブルームバーグ)。
■ 韓国も「瀬取り」に関与?
北朝鮮の瀬取りには、中国やロシアだけでなく、同盟国として制裁に積極的に協力すべき韓国の関与も疑われている。そのため、韓国メディアには、「バーソルフ」派遣は、北朝鮮よりもむしろ韓国に対する警告シグナルだと捉える論調も出ている。
韓国の瀬取りへの関与を疑わせる事例は少なくない。たとえば、昨年5月には、東シナ海東方沖の洋上で、韓国船籍と見られるタンカーが、北朝鮮船籍のタンカーに横付けしているのを海上自衛隊機が確認。韓国の輸入業者が、禁輸措置が取られている北朝鮮産の石炭をロシア産と偽って違法に輸入した件も明るみになった。米財務省外国資産管理局(OFAC)が先月22日に発表した瀬取りを行った疑いがある船舶の最新のリストには、初めて韓国船籍の船も挙げられた。
日韓関係を決定的に悪化させた昨年末の韓国海軍駆逐艦による海上自衛隊哨戒機に対する「レーダー照射事件」についても、瀬取りとの関係を指摘する政府関係者や識者もいる。韓国船が瀬取りを支援している現場を押さえられそうになったため、海自機をレーダー照射によって追い払おうとしたのではないかという見方だ。海自機は、救難信号を出していたとされる北朝鮮の漁船を韓国の小型ボートや警備艇が取り囲んでいる状況を確認している。ちなみに、日本側は北朝鮮船の救難信号をキャッチしていない。
■ 「友好」と「信頼」の確認よりも「警告」と「牽制」の首脳会談か
とはいえ、韓国は少なくとも表向きはアメリカ側の陣営であり、「仲間割れ」をはっきりと露呈するのは北朝鮮を喜ばせるだけだ。ちなみに、米沿岸警備艦が韓国入りしたのは、2007年以来12年ぶりだという。今回、アメリカが海軍の駆逐艦ではなく、沿岸警備隊の警備艦という異例かつ微妙なコマを用いたのは、アメリカの韓国に対する「信頼できない仲間」という微妙な見方を反映したものかもしれない。軍艦の派遣では角が立つが、目に見えるな形でしっかり釘を刺しておきたいというトランプ政権の意思が見え隠れしないだろうか。
「バーソルフ」は、韓国入りの直前には、米海軍の駆逐艦「カーティス・ウィルバー」と共に、最近は月例となっている台湾海峡での「航行の自由作戦」にも参加している。海軍に比べて本国沿岸を離れることが少ない沿岸警備隊の艦としては、最前線での活動が長期化している。「バーソルフ」は、まさに一部の米識者が「既に始まっている」という「新冷戦」のつば競り合いにふさわしい、トランプ大統領の秘蔵戦力と言えるかもしれない。
ホワイトハウスは、米韓首脳会談の実施を発表する声明で、「米韓同盟は引き続き、朝鮮半島と地域の平和と安全の根幹となる」と指摘した(ロイター)。米朝首脳会談が不調に終わった後のこの時期に行なわれる会談で、その引き締めを図るのは当然だ。しかし、それはもはや「友好」と「信頼」の再確認と言うよりは、文大統領の独断専行に対する「警告」とその親北政策への「牽制」のレベルに達しているように見える。
一言コメント
アメリカに監視してもらった方が信頼できる。
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