賞味期限切れ食品を「20円」で販売 食品ロスの究極対策とは
たまたま通りかかった店で、輸入ビールが1瓶わずか20円!?思わず目を疑ったが、「賞味期限切れ」との説明に納得した。消費者庁によると、わが国でまだ食べられるのに捨てられている「食品ロス」は、平成27年度の推計で年間646万トン。国民1人あたり50キロ以上もムダにしている計算だ。今年の節分では、農林水産省が「恵方巻き」の大量生産・大量廃棄の自粛を流通業界に求めて話題になるなど、「もったいない」意識は深まりをみせている。(重松明子)
「ルピシア ボンマルシェ」代官山店(東京都渋谷区)では、賞味期限切れのクッキー缶やチョコレート、お茶、梅干し、調味料などを20円均一で販売している。入荷は不定期のため扱いのない日もあるが、定価で4千円を超える高級品が出たこともあり、1商品5点までと購入制限を設けるほど大人気だ。
「地元のシニア主婦層に喜ばれている。ジュースをその場で飲んで味を確認し、両手いっぱいに買って帰る方もいらっしゃいます」。加藤亜紀店長がほほえんだ。
店舗は、関東大震災後に復興住宅として建設された同潤会アパート跡地に建つ再開発ビル内にある。おしゃれで高級なイメージがある代官山だが、昔からの住民は庶民的で食べ物を大切にする意識も高い。「賞味期限が1カ月くらい切れてたって、死にはしないわよ」などとお客に励まされ、これまでに苦情は1件も寄せられていない。
開店は11年前。「もったいない」をコンセプトに、賞味期限間近などの理由で廃棄される予定の商品を約700品目そろえ、理由を明記しお買い得価格で販売してきた。賞味期限切れの販売は昨年1月からスタートした。
立ち上げ時から担当するルピシアグルマン相談役の中江昭英さん(64)は「法律上の問題はないが、売ってもいいのかという議論はありました。しかし、デンマークには賞味期限切れ食品専門店もあり、日本人だって昔は個人の判断で食べていた。自己責任でお召し上がりいただくことは、食品ロス問題を考える契機になる」と語った。
この1年間で計1万点以上の賞味期限切れ食品が販売されており、それらを無料で提供するメーカー・問屋は8社。ブランドイメージに傷が付くから廃棄するという企業が依然多いなか、「商品を試してもらう機会にもなる」と前向きにとらえる企業も出てきた。「こちらから集荷に出向くので、相手先は廃棄の費用が削減できます」と中江さん。
「ルピシア ボンマルシェ」は全国に13店舗あるが、代官山店以外ではテナントビル側から賞味期限切れ商品の販売を断られている。「イメージの問題や、何かあった場合の責任という面から慎重。そこが難しい所ですね」と話した。
生鮮品や総菜の「消費期限」は安全面から食べない方がよい期限だが、加工食品の「賞味期限」は味の保証期限で、実態よりも7掛け程度に短く設定されているという。
そのうえ、製造日から賞味期限までが6カ月の場合、メーカー・問屋が小売店に納品できるのは最初の2カ月まで。この「3分の1ルール」という商習慣が、「食べられるのに出荷できない」大量の在庫を生み出している実態があり、ルールの緩和・見直しが検討されている。
消費者庁が昨年度、18歳以上の男女3千人に行った調査では、食品ロス問題を知っている人は73・4%にのぼり、前年度比8ポイントも上昇。「賞味期限を過ぎてもすぐに捨てず、自分で判断する」人も過半数の51・3%と、同7ポイント増。賞味期限に対する寛容度の高まりを示している。
NPO法人「全国もったいない市場」(大阪市)は、廃棄予定の賞味期限切れ食品を引き取って生活困窮者への食料支援を行うとともに、一部を会員企業を通じて販売して活動資金に充てている。
楽天市場の「パワーステーション」、ヤフオク!の「エムズマーケット」と現在はインターネット販売のみだが来月1日、大阪市内に実店舗がオープンする。
代表理事の高津博司さん(40)は、「4年前に販売を始めた当初は、『賞味期限切れ』と明記しているにもかかわらず、購入者からクレームの電話が多数寄せられた。食品衛生上問題ない商品であることや趣旨を丁寧に説明すると、逆に常連さんになってくれる方が増えていきました」と語る。
そのうえで「『訳あり』商品の潜在需要は実は大きい。廃棄予定の食品を流通させることで、食品ロスは確実に減らせます」。 今後の目標は、各地に実店舗を増やしていくことだ。
筆者も取材を機に、1カ月前に賞味期限が切れたタイカレーのペーストを20円で買ってみた。さっそく自宅で調理すると、本格的なスパイスが複雑に香り立ち「賞味」にも全く問題なし。保管状況や期限切れの期間にもよるのだろうが、これは活用しない手はない。率直な感想だ。
一言コメント
特に日本人は気にするんだろうな。
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