伊が「一帯一路」覚書締結へ 親中政策、欧州分断助長の懸念
- 国際
- 2019年3月20日
【パリ賀有勇】中国の習近平国家主席は21日からイタリアを訪問し、中国が提唱する巨大経済圏構想「一帯一路」の覚書をイタリアと締結し、インフラ整備などで協力関係を強化する見通しだ。移民問題などで欧州連合(EU)内に摩擦を生じさせてきたイタリアのポピュリズム(大衆迎合主義)政権の「親中政策」が欧州の分断を助長しかねないとの懸念が出ている。
アジアから欧州までを結ぶ一帯一路の海路「海のシルクロード」の終点となるイタリアの北東部トリエステは、中国が熱視線を送るアドリア海の港町。港湾の指定区域内であれば関税を支払うことなく、積み荷を一時保管し、加工して再輸出もできる「自由港」として栄えてきた。習氏がローマを訪れている22日には、中国国有の中国交通建設集団とトリエステの港湾局が、港の鉄道インフラ整備に関する覚書を締結する。
欧州の真ん中に位置するイタリアは、欧州全体への流通網の拠点となることに加え、自由港であるトリエステは欧州以外への中継貿易港としても活用できるなど中国企業にとって利点が大きい。
イタリアでは昨年6月、緊縮財政を求めるEUに反発するポピュリズム政権が発足。政権内には慎重派もいるが、政権の一翼を担う「五つ星運動」代表のディマイオ副首相が8カ月間に2度訪中するなど、中国との距離を縮めるけん引役を担ってきた。
背景には2017年の債務残高が、国内総生産(GDP)比で約130%というイタリアの財政事情の厳しさがある。そのため、ポピュリズム政権は一帯一路による中国からの投資の呼び込みとイタリア産品の中国市場への輸出増に期待を寄せている。トリエステ港を管理するゼーノ・ダゴスティーノ港湾局長は「経済の低迷するイタリアは単なる投資家ではなく、流通を促進して商業的な価値を生み出す存在を必要としている。それこそが中国だ」と力説した。
一方、主要7カ国(G7)の一員でもあるイタリアが一帯一路に協力することに、EUや米国は警戒感を隠さない。東欧諸国やギリシャなど13カ国がすでに一帯一路の覚書を締結しているが、インフラや情報通信分野への投資に対する安全保障上の懸念が膨らみ始めており、EUは中国を念頭に、4月から域外からの投資の審査を厳格化する。
政権の中国接近策についてはイタリア国内でも批判が出ており、イタリア主要紙レプブリカは、「中国は新たなトロイの木馬を見つけたのかもしれない」と報じ、イタリアと中国の接近が欧州の不安定化を招きかねないと指摘した。
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