米国を甘く見過ぎていた北朝鮮 会談勧めた北幹部はどうなる…?
- 国際
- 2019年3月5日
「我々は北朝鮮のことについてはよく知っている。インチ(2.54センチ)単位で分かっている」
先月28日のハノイでの記者会見でトランプ米大統領がこう言う場面があった。
北朝鮮に対して寧辺(ヨンビョン)の核施設廃棄の他に、さらに一箇所の施設の廃棄を主張したことに関連しての発言だ。
かねて噂されている平壌郊外のカンソンの秘密核施設についてその規模や稼働状況などの証拠を北朝鮮側に突きつけたのだろう。
カンソンの施設はウラン濃縮施設と見られているが、稼働時には大量の電気を必要として発電機が大量の熱を発生するので上空から監視している米国の偵察衛星で捉えることは容易だ。
さらに、米国の偵察衛星は高度150キロまで降下すれば地上の物体を10センチ単位で探知することができ、核施設を出入りする車両だけでなく人の動きを把握することができる。
「インチ単位で」というのはいささかオーバーかもしれないが、秘密施設へウラン濃縮の原材料の搬入や濃縮後の廃棄物の搬出なども詳細に把握していたことは想像できる。
それを知ってか知らでか、金正恩委員長は寧辺以外の施設は知らぬ存ぜぬで押し通そうとしたのならば余りにも無謀だったとしか思えない。
さらに北朝鮮の李容浩(リ・ヨンホ)外相は1日未明の記者会見で「我々が要求したのは11件の国連制裁決議の内、5件だけだ」と言い、トランプ米大統領が「全ての制裁解除を求めた」と語ったのに反論したが、これも言い逃れのように聞こえる。
韓国の有力紙『朝鮮日報』日本語版は、この5件の制裁が国連安保理の制裁の中でもっとも重要なもので「制裁がもたらす効果の99%以上を占める」という韓東大学の朴元坤教授の分析を紹介している。そうだとすると、北朝鮮が要求したのは実質的に制裁の全面解除だったのだ。
「北朝鮮は屑鉄を廃棄する見返りに制裁解除を求めた」と韓国のもう一つの有力紙『東亜日報』日本語版は論評した。例え寧辺の施設は屑鉄化しても、秘密核施設を温存すればいつでも核兵器の開発を再開できるわけだったが、このシナリオも完全に破滅して北朝鮮は「核だけ抱えて救済不能のならず者国家として生きることになる」と警告した。
つまり、北朝鮮側は不完全な情報分析と「トランプに直接談判すれば誤魔化せるだろう」という甘い見通しで首脳会談に臨み、見事に失敗したということではなかったのか。
その甘い見通しで金正恩委員長に首脳会談を進言した北朝鮮の幹部たちの責任は免れないだろう。李容浩外相や対米外交担当の崔善姫(チェ・ソンヒ)外務次官の地位は大丈夫なのだろうか。
執筆:木村太郎
イラスト:さいとうひさし
一言コメント
粛清か、それとも亡命か!?
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