外来水草 増殖中 河川、用水路 豪雨で水田侵入も 九州で猛威
- 政治・経済
- 2019年2月28日
特定外来生物の水草が九州で猛威を振るっている。強い繁殖力で福岡県や佐賀県の河川で繁茂。わずかな切れ端から再生するため根絶が難しく、行政が対応に苦慮している。ここ数年、九州では集中豪雨で河川の氾濫が頻発。水草があふれた水の流れに乗り、水田に入り込んだ事例もある。また、農業用水路の通水障害を引き起こすなど、さまざまな影響を及ぼしている。(金子祥也)
九州で拡大している水草は「ブラジルチドメグサ」「オオフサモ」など。いずれも南米原産の水草だ。切れ端から増殖してしまうほど繁殖力が強く、一度広がれば根絶が難しい。
ブラジルチドメグサが農業用水路で繁殖する佐賀市は、2015年度に1417万円の予算を確保し、手作業で除去作業を敢行。しかし、取りきれなかった切れ端から翌年も再生してしまった。以降、3年連続で数百万円の予算を確保。群落が大きくならないうちに処理できるよう、通年で巡回して被害軽減に努めるが「抜本的な解決策にならない」(環境政策課)と頭を抱える。
九州農政局農村環境課も、外来水草の繁殖を問題視している。九州北部豪雨や西日本豪雨など、集中豪雨による河川の氾濫が増えており、拡大のリスクが一層高まっているからだ。「定着させないためには初期防除が何より重要だ」と警鐘を鳴らす。
福岡県久留米市では、地域の若者が初期防除に奔走する。生き物好きの学生が川の生態系を維持するため、川沿いのパトロールや除去作業などを自主的に担う。
大学生の小宮春平さん(20)は、昨年の秋に外来水草2種を発見し、同市に通報した。行政が対応するには、予算確保などで時間がかかるため、1月には友人を募って自らブラジルチドメグサの除去に当たった。「春になればあっという間に繁茂する。手遅れになる前に何とかしたかった」と話す。
市も柔軟に対応を進める。特定外来生物は生きたままの移動が厳禁。植物は乾燥させたり、熱湯にくぐらせたりする作業が必要だ。例外として、地方公共団体の職員が職務のため、緊急で引き取りや処分をするときはそのまま運搬できる。市は資源循環推進課が回収車を出して職員が回収・処分を請け負い、学生らを支援した。
2月下旬には小宮さんらの除去作業に市職員も参加。市民の通報からわずか2週間と、行政としては異例の早さで対応した。冬の冷たい水に腰まで漬かりながら、学生らとオオフサモを引き抜いた。小規模な群落だったが、それでも当日処分した水草は2・5トン。作業した職員は「冬場なのにすさまじい量。深刻さを実感した」と話す。
小宮さんは「根絶には行政との連携が不可欠。自分たちがモデルケースになり、活動を全国に広げたい」と力を込める。
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