ポイント還元、くすぶる不満=流通業界、消費増税対策に反発
消費税率10%への引き上げに合わせて政府が実施するポイント還元策に対し、流通業界で不満の声がくすぶっている。還元対象が「中小・小規模事業者」の扱う商品やサービスに限られるため、除外される大手のスーパーやドラッグストアなどが猛反発。撤回を求める声も上がり、怒りが収まる兆しは見えない。
「ポイント還元? あんなのは邪道だ」。1月に東京都内で行われた日本小売業協会の新年祝賀会。業界の重鎮は声を震わせ、こう吐き捨てた。
ポイント還元策は消費増税後の景気対策とキャッシュレス決済の普及促進が狙いで、国が財源を賄う。10月の増税から9カ月間、中小の小売店や飲食店などでクレジットカードや電子マネーを使って買い物をした人に、購入額の5%分を還元する。コンビニエンスストアや外食などのフランチャイズ店も「中小」扱いとなり、2%ながら還元を受けられる。
この還元策に対し、撤回か見直しを求める異例の要望書を政府に出したのが日本スーパーマーケット協会など流通3団体。業界側が特に懸念するのは、対象となる中小事業者の線引きだ。
中小企業基本法では小売業なら「資本金5000万円以下か従業員50人以下」が中小扱い。だが、資本金が小さくても売り上げ規模の大きい有力企業は少なくない。同協会の川野幸夫会長(食品スーパーのヤオコー会長)は「そんな企業も対象になれば対抗上、手を打たざるを得ない」と指摘。大手が値下げに動けば逆に中小が苦しみ、デフレも加速しかねないと訴える。
今回の増税では食料品などの税率を8%に据え置く軽減税率も導入される予定。複雑な仕組みに反対していた業界側も渋々、顧客対応などの準備を急いでいる。そんな中でポイント還元という新たな負担要因が突如現れ、反感を増幅させた。
「この政策、ちょっとおかしいよ。なぜ現場の声を聞かずに強行するんだ」。業界筋は憤りを隠さない。詳細な制度設計はこれからだが、強引に事を進めれば混乱と不満の拡大は必至。夏の参院選もにらみ拙速に実施を決めた政府・与党の責任も問われそうだ。
一言コメント
政策を複雑にするとこうなる。
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