ATMの紙幣切れ、釣銭用の小銭が不足… “10連休”で銀行業界が抱える不安
- 企業・経済
- 2019年1月17日
銀行マンたちから、“未知の領域”に対する不安の声が聞こえてくる。それは“御代替わり”による4月27日から5月6日までの10連休の対応だ。これまで最長の連休は6日間で、かつて経験したことのない問題が浮上しているのだという。
全国銀行協会の藤原弘治会長(57)=みずほ銀行頭取=は、昨年10月18日に10連休の対応についてこう語っていた。
「お客さまにご利用いただけるサービスは通常の土日と基本的には変わらない」
大型連休中、大垣共立銀行などを除いて多くの銀行が営業店を休業し、ATMのみで対応する方針だ。
「藤原さんはああ言っていますが、通常と同じというわけにはいかないでしょう」
こう語るのは、中部地方に本店を構えるある地方銀行の役員だ。
「まず、ATMの紙幣切れが怖い。一台のATMで最大3000万円ほど収納ができ、土日祝日の前日には平日より多く紙幣を補充しています。また、多くの銀行で採用されている還流式ATMは、お客様が入金した紙幣を支払いに回せます。ですが、10連休中には入金より支払いが多くなり、紙幣が切れたらATMは利用できなくなってしまうのです」
一方、連休中も営業を予定する飲食店などは少なくないはずだ。上野で飲食店を営む40代店主は、こんな不安を口にする。
「うちは銀行でなく、信用金庫へ毎日行って釣銭用に小銭を両替しています。消費税の関係で、特に1円玉が足りないとお客様に迷惑をかけてしまいますからね。で、この連休中に両替をするにはどうすればいいんでしょうか」
残念ながら、現時点でこの不安を解消できる金融機関は無きに等しい。関東地方に本店を置く信用金庫の支店長は苦笑しながら、
「多くの金融機関で、両替機は店舗のなかに設置されているので連休中は使えません。大口取引先から頼まれたら、休日を返上してでも小銭を届けることも。とはいえ、山間部などの観光地にある取引先から相談されても、“連休前に小銭を多めに用意しておいて下さい”と言うしかありません」
連休中に営業する飲食店などは防犯上、売上金を貸金庫に預けるという。
「貸金庫は連休中も稼働させるので、本店から収納量のチェックを指示されています。10日もそのままにしておけば間違いなく容量をオーバーするので、休日を潰して夜間金庫から回収しなければならなくなると思います」(同)
実は、それ以上の“難所”が連休中でなくその直後に訪れるという。メガバンクの行員によれば、
「連休は、月末に始まり月初で終わる。休み中も入出金や送金などはATMで対応できます。だが、企業も休みなのでそうした手続きが連休後に集中するのは確実。その時、システムトラブルが起きないか懸念しているのです」
2002年、3行が統合したばかりのみずほ銀行で、大規模なシステムトラブルがあったのは記憶に新しい。この教訓を生かして、全国の金融機関を繋ぐ全銀システムは、すでに万全の体制を敷いているというが、
「問題は、個別銀行のシステム。想像以上に事務手続きの量が多く、システムの処理能力を超えたらトラブルが発生する可能性は否定できません。復旧に時間がかかれば、みずほ銀行トップのクビが飛んだように、うちの頭取も……」(先の地銀役員)
祝賀ムードが最高潮に達する連休中、銀行マンたちはただバカンスを楽しむという訳にはいかないのだ。
「週刊新潮」2019年1月24日号 掲載
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