西日本豪雨半年 自治体7割が職員不足
昨年7月の西日本豪雨で被害の大きかった岡山、広島、愛媛3県の全70市町村のうち、約半数で職員の人手不足が続いていることが、毎日新聞の調査で分かった。死者・行方不明者が出た25市町に限ると、7割が現在も人手不足に陥っている。職員不足が地域の復興やインフラ復旧の足かせになっている可能性があり、災害前の状態に戻るまで5年以上かかるとの回答が25市町の5割以上に達した。
6日で西日本豪雨から半年。調査は昨年12月、復旧・復興を進める上での課題や発生当時の様子などを書面で尋ね、3県の全市町村から回答を得た。
死者・行方不明者が出た25市町では、職員の人手は84%(21市町)が「発生当時、不足していた」と答え、不足人数は回答した8市町だけで計1000人に達した。「不足なし」は、広島県福山市、広島市、愛媛県今治市、松山市の4市だった。現在も不足する自治体は72%(18市町)に上り、不足人数は回答した11市町で計105人だった。
一方、死者・行方不明者のなかった45市町村では、発生当時は58%(26市町村)で職員が不足していたが、現在の不足は36%(16市町)に改善していた。
業務への影響は、発生当初は避難所運営など災害対応が滞り、現在は土木や農林業など技術系の職員が足りない傾向がみられた。
また、復旧・復興に関し、豪雨前の状況に戻るまでに必要な期間を尋ねると、25市町の56%(14市町)が5年以上と答えた。このうち、岡山県倉敷市、井原市、広島県熊野町、愛媛県今治市の4市町は「見通しが立たない」状態。死者・行方不明者がなかった45市町村でも、13%にあたる6市町村が5年以上を必要とし、うち岡山県真庭市、愛媛県上島町、内子町の3市町は復旧・復興の見通しが立っていない。
復旧・復興の課題や障害について複数回答で聞くと、「財源不足」(40市町村)▽「人材不足」(26市町)▽「高齢者支援」(18市町)▽「人口流出」(9市町)――を挙げる自治体が多かった。
災害時の自治体運営に詳しい秦(はだ)康範・山梨大准教授(地域防災学)は「半年が経過するのに、これだけ人手が足りていないのは深刻だ」と指摘し、「市町村は災害対応の最前線に立つが、職員削減や人事異動の影響でノウハウが蓄積しづらい。南海トラフ地震などでの混乱は目に見えている。災害対応を専門とする全国組織を作り、被災自治体へ派遣するなど根本的な仕組みの見直しが必要だ」と話す。【渡辺諒、松本光樹】
◇不明なお9人、死者236人
岡山、広島、愛媛3県では、被災後のストレスなどで亡くなり、災害関連死と認められるケースが13人に上った。一方、この3県では仮設住宅計697戸が計画通り完成、災害廃棄物も来夏までに処理を終える見通しとなった。
関連死の県別内訳は広島と愛媛が各4人、岡山5人。半年後に犠牲者110人の半数を関連死が占めた熊本地震と比べ、被害が広範囲で統一基準づくりや認定作業に時間がかかった。体力が低下し肺炎などになった住民が含まれ行政のケアが今後も課題となる。関連死は広島県でさらに2人が認定される見込みで、広範囲が浸水した岡山県倉敷市真備(まび)町地区も今後、認定が増える可能性が高い。
5日現在の豪雨の死者は、関連死を含め15府県で236人となり、依然9人が3県で行方不明になっている。
一言コメント
今年は大丈夫だろうか。
コメントする