サイバー攻撃への日米安保5条適用 米国と協議へ
- 政治・経済
- 2019年1月5日
政府が日本へのサイバー攻撃に対し、米国の対日防衛義務を定めた日米安全保障条約5条を適用するため米政府と協議に入ることが3日、分かった。日米外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)で5条適用を盛り込んだ成果文書のとりまとめを目指す。サイバー攻撃を受けた際の米国の対応を明確化することで、サイバー領域での抑止力強化を図る。
日本政府がサイバー領域での米国との協力関係について念頭に置くのは、米国や欧州諸国など29カ国が加盟する北大西洋条約機構(NATO)が2014年に採択した「ウェールズ宣言」だ。NATOには加盟国への武力攻撃をNATO全体への攻撃とみなす集団防衛条項(5条)があり、宣言はサイバー攻撃にも5条を発動する意思を明確にしている。
一方、日米安保条約5条は、日本で武力攻撃が発生したときに米国が対日防衛にあたることを規定しているが、サイバー攻撃に関しては「深刻なサイバー事案が発生した場合、緊密に協議し、適切な協力行動をとり対処する」(日米防衛協力のための指針)との表現にとどまる。日本政府はNATOと同様にサイバー攻撃への日米安保条約5条の適用を明確にしたい考え。
日本政府は昨年12月に閣議決定した防衛力整備の指針「防衛計画の大綱」で、サイバー空間での「相手の利用を妨げる能力」の強化を掲げ、サイバー反撃能力の保有を盛り込んだ。重要インフラなどへのサイバー攻撃による被害が、国民の生命、自由、幸福追求の権利を覆すレベルだと判断できれば武力攻撃事態と認定し、自衛権の発動としての自衛隊による反撃は可能としている。
サイバー攻撃は主体を特定できない場合など武力攻撃事態の認定が難しいケースも想定されるが、日本政府関係者は「サイバー攻撃を武力攻撃とみなして日本が反撃するのであれば、日米安保条約をどう適用するかの議論は避けられない」と強調する。
ただ、トランプ米政権では、安全保障政策を担当する閣僚が相次いで交代し、2プラス2の一角を担うマティス氏も国防長官を辞任した。日本政府は米政権内の陣容を見極めつつ、春以降の2プラス2開催を調整する構えだ。
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【用語解説】日米安全保障条約5条
日本の施政下にある領域での日米いずれか一方への武力攻撃に対し、「共通の危険に対処するよう行動する」と定めた規定。米国の対日防衛義務を定めた中核的な条文として位置づけられている。近年は中国による尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺での活動が先鋭化しており、日米両政府は尖閣諸島が5条の適用対象であることを繰り返し確認し、中国を牽制している。
一言コメント
是非適用すべきだろう。
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