テレビCM頼らず目標の7割増し。「キリンレモン」復活へのこだわり
- 企業・経済
- 2019年1月3日
キリンビバレッジは2018年4月にリニューアル発売した炭酸飲料「キリンレモン」の年間の販売数量が21年ぶりに600万ケースを突破した。発売90周年での大幅刷新で、600万ケースは当初の販売目標に対して約7割増となるほか、前年実績の約2倍になる。当初の販売目標は360万ケース。販売好調を受け7月に同500万ケースに引き上げ、さらに10月に600万ケースに上方修正していた。
刷新では品質はそのままで瀬戸内レモンピールエキスを加え、パッケージは初代の瓶容器に見立てたペットボトルを採用。デジタルメディアを中心にマーケティングを展開し、「若者の需要を捉えた」(同社広報担当)と好調の要因を分析する。
キリンレモンは18年に発売90周年を迎えたロングセラー商品。リニューアルまで販売数量は減少傾向が続いていたが、600万ケースを達成すれば21年ぶりとなる。炭酸飲料の主力として復活をアピールした。
発売90周年のリニューアルでは、従来の品質を保ちながら瀬戸内レモンピールを加え爽やかさを高めた。パッケージで初代の瓶容器に見立てたペットボトルを採用し、中央にキリンの象徴の聖獣マークをデザインした。
キリンレモンの需要増をけん引したのはターゲットとした20―30代の若年層。キリンビバレッジは若年層向けに徹底したデジタル戦略を採用した。
通常なら重点に位置付けるテレビCMを最小限にとどめ、デジタルメディアを軸としてPRを展開した。メーンムービーをネット配信したほか、若者に人気が出始めたミュージシャンらと相次いでタイアップ企画を実施。派生ムービーを配信し、デジタルでの話題を加速させた。
キリンビバレッジの好調はキリンレモンだけではない。「2018年度までの中期経営計画の最終目標を17年度までに前倒して達成してしまった」。堀口英樹社長の口調は晴れやかだ。キリンホールディングス(HD)の中で飲料は低収益事業のレッテルを貼られ、構造改革が軌道に乗らなければグループのポートフォリオから外れる可能性もあった。15年度の営業利益率は1・5%。これを3%以上に引き上げるため、堀口社長は「利益と成長の両方を追う」方針を掲げた。
08年のリーマン・ショックから14年くらいまで消費が低迷、清涼飲料市場は価格競争に陥ったという。この戦いはボリュームの大きい企業が有利となり、シェア5位のキリンビバレッジは苦戦を強いられた。さらに「箱数主義」が足を引っ張った。価格競争の中で箱数を合わせていても利益にならない。15年度は箱数は伸びているのに利益は低迷した。
「とにかく社内のベクトルを合わせよう」。堀口社長は決断した。利益と成長の両方を追うため、ブランドの強化と収益の確立をテーマに掲げた。ブランドでは全方位で取り組むのをやめ、維持するブランドのポートフォリオをつくる。そして「生茶」「午後の紅茶」「ファイア」の3ブランドの強化が決まった。
収益の確立はサプライチェーンマネジメント(SCM)コストを減らす。商品数が多く最小管理単位(SKU)は210に上っていたが、この大幅な削減に着手し、17年には142に減らした。また、販促用が多い大型ペットボトル商品を抑制し、小型商品に注力。廃棄費用や物流費を大きく削減できた。
16年度の営業利益率は4・9%と中計目標をクリア。17年度は7・6%(事業利益率)に達し、低収益から脱した。中計を前倒しで達成し、グループ内で先行して21年度への新中計を発表。事業利益率10%を目指す。「飲料業界の海外プレーヤーは経営の一つのハードルが(事業利益率)10%だ。2ケタの利益にこだわる」と堀口社長は思いを込める。このため消費者の健康意識を踏まえブランドに健康領域を付加・強化していく戦略だ。
一言コメント
そういえばキリンレモンのCM見なくなった。
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