景気はいい、でも実感がない。そういうフレーズを、何度ニュースで聞いただろうか?では、本当のところはどうなのか?数字でひもといてみようと思う。

政府が毎月発表している月例経済報告によると、景気の回復が続いている状態は、主に小泉政権時の73か月が戦後最長。茂木経済再生担当相は12月、「これに並んだ可能性が高い」と述べている。1月に更新すれば、新記録だ。政府は、空前の好景気と分析している。

ではなぜ、景気回復といえるのか?その指標として財務省の法人企業統計を見ると、企業の経常利益は、戦後最長の時が50兆円ほど、今は80兆円を超えている。つまり、企業は利益を着実に増やしているのだ。

では、実感が伴わないのはなぜなのか?それは、賃金が伸びていないから。厚生労働省の毎月勤労統計を見ると、実際にもらう金額は、戦後最長の時はその前に比べて、年率に換算してマイナス0.2%、今回はプラス0.7%。つまり、額面は増えていることになる。

しかし、物価の上昇を除いた実質、つまり実際の懐具合を見ると、前回はマイナス0.2%、今回はマイナス0.5%、つまり給料が増えた気がしないというわけだ。

増えた気がしないとどうなるか。物価の変動を除いた実質GDP(=国内総生産)を見ると、個人消費は前回はプラス1.0%、今回はプラス0.4%。つまり、お金をあまり使わなくなっているというわけだ。

では、2019年、景気回復は続くのか?専門家の多くは悲観していない。ただ、影を落としているのが、中国向けの輸出だ。スマホ需要が一巡し、米中貿易摩擦もあり、中国への輸出が伸び悩んでいるのだ。

海外景気が好調だった2016年1月から2017年秋にかけては、実質GDPは年率で1.8%伸びているが、このうち輸出の貢献度は0.9%もあった。しかし、2017年秋から2018年秋にかけて、実質GDPは年率でわずか0.1%しか伸びていない。これは、輸出の貢献度が0.2%まで下がってしまったからだ。

もしこの先、海外の景気が悪化したり、円高が進んだりすることがあれば、輸出が落ち込み、好調だった日本企業の業績が悪化する懸念がある。

三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林真一郎主席研究員は、「冬のボーナスは増えている。一方で足元では米中貿易摩擦がエスカレートし、それが世界景気を悪化させる懸念がある。このまま景気回復が続くのか、2019年は日本経済の力が問われる1年になる」という。

企業が利益を増やし、賃金があがり、消費が進み、企業が利益を増やし…そういう好循環を生み出せるのか、正念場の1年となりそうだ。