東芝中期経営計画 成長施策に疑問 LNG売却予断許さず
- 企業・経済
- 2018年11月9日
東芝が8日に中期経営計画を発表し、再建の道のりを本格的に歩み始めた。経営破綻(はたん)回避のため、本業のもうけを示す連結営業利益の約9割を稼いでいた半導体メモリー事業を手放した同社にとって、残った事業の「稼ぐ力」を伸ばさなければならない。だが、中期計画で掲げた成長施策は目新しさに欠ける。懸案だった米国での液化天然ガス(LNG)事業を中国ガス大手に売却できるかも予断を許さない。(井田通人)
「業界トップクラスに持ち上げたい」
東芝の車谷暢昭会長兼最高経営責任者(CEO)は8日の記者会見で、収益向上に向けた意気込みをそう述べた。
同社の平成31年3月期の営業利益見通しは600億円。利益率はわずか1・7%しかない。それを34年3月期は6%以上、最終年度の36年3月期には8~10%に高めるという。
不正会計や米原発子会社の巨額損失で破綻危機にひんしている間に、ライバルとの差は大きく開いた。宿命のライバルである日立製作所は、足元の営業利益率が8%近くに達し、34年3月期には10%まで高める考えだ。
東芝の火力発電設備は温暖化への懸念から新規案件が減り、システムLSIは開発費がかさみ赤字にあえぐ。リチウムイオン電池や再生エネルギー発電設備など、次の柱と頼む事業は激しい競争が予想される。当面は合理化やコスト削減に頼らざるを得ない。
さらに気がかりなのは、「アクティビスト」と呼ばれる物言う株主の存在だ。6%超を保有する米ファンドのキング・ストリート・キャピタル・マネージメントは、東芝が実施する7千億円の自社株買いに対し、金額を増やすよう要求。香港のファンドも似たような動きをみせる。経営陣が株主対応に神経をすり減らし、中長期的な視点を失う可能性も捨てきれない。
売却を決めた米LNG事業は本業との親和性が低く、販売価格が大きく変動することなどから、一時は最大1兆円の損失が発生する懸念があった。東芝が中国ガス大手に売却できれば、「負の遺産」を一掃し、経営再建に専念できる。しかし、LIXILグループはイタリアの子会社を中国企業に売却しようとした際、米国政府に待ったをかけられた。
東芝も米国から横やりを入れられる恐れがあり、平田政善最高財務責任者(CFO)は記者会見で、「各国の法令をパスしないといけない」とリスクを認めた。
一言コメント
まだ棘の道が続きそうだ。
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