檀家の「お寺離れ」どう対応? お坊さんたちが緊急シンポ
- 政治・経済
- 2018年9月21日
23日は秋分の日。次の3連休は菩提寺(ぼだいじ)でご先祖さまにお参りする人も多いだろう。ただ、檀家(だんか)の「お寺離れ」は近年、ますます進んでいる。この現状をどう考えるか、率直な意見を交わすシンポジウムが東京都内で開かれ、宗派を超えた住職たちが、お寺の現場で起きていることを報告した。
シンポジウムは「お寺の今後を考えるサミット」と題して行われた。文化庁の宗教年鑑(平成29年)によると、全国にある仏教系寺院は約7万7千に上り、約5万5千店とされるコンビニエンスストアよりも多い。ただし、2万以上の寺院が、後継者不足などで住職がいない「無住寺院」になっているといわれ、維持存続には大きな課題を抱えている。
経営面で苦境に直面しているお寺も少なくない。国内最大級の仏教教団である浄土真宗本願寺派が同派のお寺を対象に行った調査(26年実施)によると、寺院収入が年300万円未満のお寺は45%に上った。年50万円未満も10%あった。寄付の出費など檀家であることが負担となり、菩提寺を離れ、先祖代々の墓を更地に戻す「墓じまい」も増えている。
「お坊さんは、根底に信心のある究極のサービス業だと思う」。シンポジウムで登壇した浄土真宗法瑠(ほうりゅう)寺(埼玉県所沢市)の矢島浄純(じょうじゅん)住職(46)はこう語った。その発言は、社会とお寺の関係性の変化を踏まえたものだ。
変化を促した出来事の一つが、ネット通販大手のアマゾンジャパンが27年に取り扱いを始めた「お坊さん便」だ。法事や法要で読経する僧侶をネットで手配できるサービスは、仏教界に“衝撃”を与えた。
矢島住職も、インターネットで僧侶派遣サービスなどを手掛けるユニクエスト(大阪市)などから葬儀仲介を受け、同僚の12人の僧侶と月60件以上の法要などを手がけている。「托鉢(たくはつ)だけでは食べていけない。(葬儀社から)仲介を受けたとしても、人間としてつながることができる。新たに結ばれたご縁を生かすも殺すもお坊さん次第ではないか」(矢島住職)
僧侶派遣を仲介する企業には、依頼者から「別のお坊さんを紹介して」などの要望が寄せられている。お坊さんは消費者に選択される時代になった。
ただ、そうした新しい状況を肯定的にとらえる声も。浄土宗正念寺(京都府八幡市)の田中龍彦(りゅうげん)住職(54)は「研鑽(けんさん)することで身なりや言葉の使い方に気を配るようになる。選んでもらえるような仕組みが広がっていけば、お坊さんも切磋琢磨(せっさたくま)して業界が良くなっていく」と指摘した。
シンポジウムでは、代々受け継がれてきたお堂などの施設も、維持費用の観点からスリム化が必要だ、との意見も出た。これには異議も唱えられた。例えば、真言宗極楽寺(奈良県安堵町)の田中全義(ぜんぎ)住職(32)は「寺の歴史や、代々受け継がれてきた仏像や縁起を受け継いでいくことに、仏法がある。仏法をどう伝えていくのか、積極的な取り組みを考えるべきでは。それが僧侶の役割」と述べた。
近年は、若手の僧侶を中心に社会との結びつきを深めようとする動きも増えている。田中住職も、仏画教室など地域に開かれたイベントを企画、お寺の存在感を示そうと試みている。
一言コメント
お寺が多すぎるような気もするが…
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