<大阪市水道工事>産廃、人工島に不法投棄 偽造印で管理票
大阪市発注の上下水道工事で、産業廃棄物を適切に処分したことを示す管理票「マニフェスト」が大量に偽造されていた問題で、複数の施工業者が毎日新聞に「大阪湾の埋め立て地に、工事で出た産廃を不法投棄していた」と証言した。10年以上前から産廃処分場の印鑑を偽造していたとされ、年間数億円の処分費が公金から支払われていた疑いがある。市は、廃棄物処理法違反容疑などでの刑事告発を検討している。
上下水道工事では、道路を掘る際に出るアスファルトと、その下地となる砕石や鉄鋼スラグなどの「路盤材」を産廃として処分場に運ばなければならない。その下の土砂は埋め立てに利用する決まりだ。
実際に施工するのは、ほとんどが下請け業者。運搬業者を通じて処分場に産廃を運び、マニフェスト用紙に産廃の種類や量を記入。処分場で押印してもらい、そのコピーを市に提出する仕組みだ。用紙は7枚つづりの複写式で、各業者は5年間保管する義務がある。
大阪市では、土砂は全て人工島の夢洲(此花区)に運んで埋め立てるが、関係者によると、多くの施工業者が産廃処分すべき路盤材も、土砂と一緒に埋め立てていた。地面を斜めに掘ることで掘削土砂の量を減らし、その分だけ路盤材を混ぜていたという。搬入の際に、大阪市港湾局は、土砂の量を計測するなどしていたが、産廃が土砂に混ぜられているのを見抜けなかったとみられる。不法に埋め立てられた路盤材の産廃処理費が、市から業者に支払われていたことになる。こうした不正は主に路盤材で多いとされる。
市によると、2016年度の上下水道工事の産廃の処理量は、アスファルト約4万1000立方メートル、路盤材約4万3400立方メートルなど。計約5億円に上る処理費(運搬費を含む)が業者に支払われていた。
毎日新聞が偽造の疑惑を指摘し、市は5月から調査。9月11日、16年度の全工事221件のうち全体の半分となる約2万3500枚に偽造の疑いがあると発表した。元請け業者177社中163社、運搬業者85社中69社が関与した可能性があるとされ、市は業者への立ち入り調査を進めている。
市水道局は「不正の手口はまだ把握できていないが、産廃処理制度の根幹を揺るがす深刻な事態だ。徹底的に調べる」としている。【遠藤浩二】
◇「どこもやりたい放題」
「10年以上前からマニフェストを偽造し、莫大(ばくだい)な利益を上げた。どの業者もやっていた」
大阪市発注の上下水道工事を巡り、複数の施工業者が毎日新聞に不正の実態を生々しく証言した。
関係者によると、印鑑店に依頼し、本物の印影を基に、処分場や工場長の名前が入った判子を偽造。実際には産廃を適切に処分していないのに、勝手にマニフェストに押印して市に提出する手口が横行していたという。
ある業者は「書類さえそろっていれば市の職員が工事現場をチェックすることはなく、やりたい放題だった。路盤材に関しては全て偽造していた」と打ち明ける。偽造したマニフェストは年間1000枚近くに上ったという。
別の関係者も「不正を長年続けていた。多額の利益を上げ、会社の幹部が不動産などの購入に使っていた」と明かし、「不正に手を染めたことを今では後悔している」と話した。【遠藤浩二】
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不正のオンパレードや。
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