スクープ パイオニア、9月危機ひとまず回避
- 企業・経済
- 2018年9月12日
経営不振に陥っているパイオニアが、香港の投資ファンド、ベアリング・プライベート・エクイティ・アジアから資金調達することが明らかになった。9月下旬に訪れる借金返済期限を守れるかどうかが焦点になっていたが、ひとまずベアリングからの資金でしのぐ格好。だが経営再建に向けた抜本的解決には程遠い。まだ危機が去ったとは言えない。
焦点となっていたのは9月末に返済期限を迎える130億円強のシンジケートローン(協調融資)。経営不振が続き手元資金が枯渇しているパイオニアは、三菱UFJ銀行が取りまとめ役になり11行が参加しているこの協調融資の返済が厳しい状況に追い込まれていた。仮にこのままデフォルトした場合、銀行とのADR(裁判外の紛争解決)手続きに移行したうえ、最悪の場合は民事再生法などの法的整理に追い込まれる可能性すらあった。
今回、パイオニアは200億円以上をベアリングからローンの形で借り入れることで合意したもようだ。ただこれは単なるローンではない。ベアリングは銀行ではなくあくまで投資ファンド。金利収入だけで稼げばいいというわけではないからだ。
交渉関係者によると、今回のローンは債務の株式化(デット・エクイティ・スワップ、DES)含みだという。ひとまずローンの形でベアリングは資金を供給するが、今後の交渉によりこの資金はパイオニアの株式に切り替わる可能性がある。仮にDESを巡る条件交渉が決裂した場合、パイオニアはローンを返済するか、今回のローンの担保として差し出す子会社株を取られることになりそうだ。
DESが実施された場合、株式数が増えるため既存株主にとっては希薄化リスクが気になるところだろう。だが今のパイオニアには今回の新規ローンを返済する余力があまりなく、「DESか、担保株を召し上げられるかの二択しかない」(交渉関係者)との見方がある。
担保となる子会社株は完全子会社のインクリメント・ピー(IPC)とみられる。カーナビや自動運転に欠かせないデジタル地図データを持つ優良子会社で、仮にこの株を手放すことになると、パイオニアとしては虎の子を失うことになり、再建の行方がますます不透明にならざるを得ない。
ひとまず9月危機を乗り切れそうなパイオニアだが、先行きは暗雲が立ち込めたままだ。経営状況は依然として厳しく、毎月のキャッシュフローはトントンか赤字という状況が続いているもよう。今回の調達資金もシンジケートローンの返済で半分以上が消えることになりそうで、資金繰りは依然としてカツカツだ。
先週末には自動車向けファクトリーオートメーション(FA)事業を手掛ける子会社の東北パイオニアEGをデンソーに109億円で売却すると発表したが、それも焼け石に水といった感は否めない。パイオニアは1年以内に返済しなければいけない借金を340億円強(6月末時点)抱えている。こういった状況を考慮すると、今後も金策に走り回らなければいけない状況は何ら変わらないだろう。
一言コメント
救済する企業はないのか。
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