中国公船の主権侵害、尖閣国有化以降常態化か 漁船への接舷や移乗40件超
日本政府が尖閣諸島(沖縄県石垣市)を国有化した平成24年以降、領海外側の接続水域などで中国の公船と漁船が接舷したり、公船の乗組員が漁船に移乗したりするケースが40件以上確認されていることが19日、政府関係者や海上保安庁への取材で分かった。漁業指導や取り締まりを行ったとみられる。尖閣周辺では日中漁業協定で中国漁船の操業が認められているが、漁船への指導などは管轄権の行使に当たり、主権侵害が常態化している恐れがある。日本政府は移乗を確認するなどした場合、中国側に抗議している。
海保によると、尖閣周辺の日本の排他的経済水域(EEZ)で、中国海警局の「海警」が搭載艇を降ろして中国漁船に横付けしたり、漁船側が海警に接舷したりしていた。搭載艇から数人の乗組員が漁船に移乗することもあったという。
海保が公表している接舷や移乗の件数は24年が12隻、25年8隻、26年4隻、27年1隻、28年7隻。29年分のデータについて海保は「関係省庁による判断の結果、公表していない。個別の事案には答えられない」と説明している。ただ、政府関係者によると、29年は9隻で接舷や移乗が確認されており、尖閣を国有化した24年以降で少なくとも41隻に上っている。
データ非公表の背景には、28年8月に約200〜300隻の中国漁船が尖閣周辺に押し寄せ、4日間で漁船延べ72隻と公船延べ28隻が相次いで領海侵入したため現場が混乱し、日中関係が緊迫化した経緯がある。日本は中国に漁船を尖閣周辺に近付けないよう申し入れており、中国を過度に刺激しないように配慮したとの見方が出ている。
海保は一連の海警の動きについて「漁船への指導など管轄権の行使が疑われると判断した」としている。政府関係者は、移乗後に中国漁船が尖閣から離れていくケースもあったと指摘。海警が漁船に対し、領海警備に当たる日本の巡視船に近付かないよう促している可能性もあるという。
中国側は、海上警備を担当する中国海警局が自国の漁船を適切に監督しているという実績を積み重ねることで、海域の管理を着実に進めているとのアピールを強め、領有権の主張を正当化する狙いがあるとみられる。
海警局は7月、軍最高指導機関、中央軍事委員会の指揮下にある武装警察に正式編入された。中国では例年8月に尖閣周辺での漁が解禁され、漁船が出漁。今年は16日に休漁期間が明けており、海保が領海侵入に警戒感を強めている。
■日中漁業協定
国連海洋法条約の下で日本と中国の漁業秩序を定め、平成12年に発効。尖閣諸島がある北緯27度以南の「以南水域」では日中双方の漁船が操業できるとする一方で、以南水域内の日本の排他的経済水域(EEZ)での中国漁船への指導、取り締まりについては実質的な“空白海域”になっている。以南水域で日本側は中国漁船に国内法を適用しないとしており、双方による自国漁船の取り締まりも規定していないためだ。日本政府は同条約に基づき、以南水域の日本側で中国側が自国漁船を取り締まることはできないとしている。
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