EU、米IT流に不信 グーグルに巨額制裁金
- 国際
- 2018年7月23日
■グローバル化の中…「課税逃れ」に待った
■後れをとる欧州企業に競争力つけたい
欧州連合(EU)が競争法(独占禁止法に相当)違反で米IT大手グーグルに過去最高の43億4千万ユーロ(約5700億円)の制裁金を科した。EUは近年、巨大な米IT企業を相次ぎ摘発。背景には圧倒的な市場シェアと膨大なデータを駆使し、莫大(ばくだい)な利益を挙げてきたビジネスモデルへの不信感がある。米国とは貿易摩擦を抱える中だけに、その行方に与える影響も注視される。
「支配を固める道具にアンドロイドを使った」。18日の発表時、EUのベステアー欧州委員(競争政策担当)がグーグルを批判する口調は厳しかった。
欧州委によると、携帯端末向け基本ソフト(OS)のアンドロイドのシェアは欧州、世界ともに約8割。グーグルはこの強い立場を利用し、アンドロイドと検索エンジンなど自社アプリをあらかじめ一緒に搭載するようメーカーに強要。金銭的優遇も与えていた。
この結果、「ライバルは競争する機会、消費者は競争による恩恵を奪われた」(ベステアー氏)。EUが違法と判断した理由だ。
◆アップルも
ただ、EUが米IT大手を標的にしたのは初めてでない。頭文字から「GAFA」と呼ばれるグーグル、アップル、フェイスブック(FB)、アマゾン・コムはここ数年、競争法違反や「課税逃れ」で次々と摘発された。EUの厳しい姿勢には、これらの企業が経済のグローバル化やデジタル化の中、法の網目をかいくぐるような手法で荒稼ぎしているとの不信がある。
「課税逃れ」では、米企業は支店など拠点をEU加盟国に置くものの、その進出した加盟国との間で税優遇の協定を結び、納税を免れた。現在の国際ルールでは拠点に集まる所得を計算して各国当局が課税するが、それをすり抜けていた格好。欧州委員会は3月、「デジタル課税」案を公表。他の加盟国も条件を満たせば直接課税できるようにするなど、課税強化に乗り出した。
IT企業は購買記録など集めた利用者の個人データも用い、さらなるビジネスにつなげる。だが、3月にはFBから8700万人分の個人情報の不正流出が発覚。EUが5月に施行し、企業に個人情報の厳格な取り扱いを義務づけた「一般データ保護規則」は、IT企業の勝手な個人情報の利用を防ぐのが狙いだ。
EUの一連の動きには欧州政治を揺るがすポピュリズム(大衆迎合主義)勢力の台頭も関係する。その土壌にはグローバル化に伴う不公平感があり、グローバル化を推進するEUとしては市民の信頼を得るため、その“勝ち組”として象徴的な米IT企業には厳正に対処する必要がある。
EUは今、経済のデジタル化を急ぎ、新たな成長の原動力にしようともしている。米IT企業による市場の独占状態に風穴を開け、大きく後れをとる欧州企業の競争力強化を図りたいとの思惑も透ける。
◆貿易摩擦は
一方、気がかりは米国との貿易摩擦への影響だ。米国による自動車の輸入制限発動の是非の判断を控え、EUのユンケル欧州委員長は25日に訪米。トランプ米大統領と会談し、打開策を探る予定だが、直前のグーグルへの制裁金発表で緊張が増すとの見方もある。
ベステアー氏は「法を執行しているだけ」と述べ、貿易問題と絡めるべきではないと強調する。だが、トランプ氏はグーグルへの制裁金について、「彼らは米国を本当に食い物にしている」とツイッター上で改めてEU批判を繰り返した。
一言コメント
EUと大企業の摩擦はこれからも増えそうだ。
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