西鉄の商業施設「チャチャタウン小倉」の挑戦 「ダメ出し」受け止め魅力アップ
- 経済情報
- 2018年7月15日
西日本鉄道が北九州市小倉北区で運営する商業施設「チャチャタウン小倉」の売上高が、堅調に伸びている。支持しているのは高齢者と子育て世代。子育て中の母親から寄せられる「辛口」コメントを、施設改善に生かし、客との距離を近づける。その姿は、人口減少時代における商業施設のモデルとなり得る。
12日午前9時半。毎週木曜日に開かれる朝市に、多くの客が集まっていた。その2時間後、中央広場に設置されたテントの下で、ラジオ体操が始まった。買い物客が、次々に参加した。高齢者の姿が目立った。
近くに住む畑多美子さん(63)は「独り暮らしで、家にいても退屈。ここにくれば誰かと交流できるし、くたびれたら休んで何時間もいる」と打ち明けた。別の女性(77)も「木曜日は朝市とラジオ体操に参加すると決めている。ここはイベントも多く、健康維持のためによく来る」と語った。
チャチャタウン来館者の半数を、50代以上が占める。施設内には、至る所に休憩用ベンチがあり、ショーやライブが365日開かれる。
北九州市の高齢化率は29・6%で、他の政令指定都市に比べて高い。高齢者が居続けられる仕掛けは、施設の強みとなっている。
■母親が課題指摘
「こんな暗い場所、誰も使いませんよ」。常連客の女性から、荒瀬聡館長(43)に指摘が飛ぶ。
批判されたのは、2階にあるキッズスペースだった。確かに、光が届きにくい場所にあり、狭い。
荒瀬氏らは早速、キッズスペースを、広々とした屋上に移転しようと、準備を進める。
施設の課題を、ズバズバと進言する女性は、チャチャタウンの「プランニングサポーター」だ。改善点の指摘やイベント企画をボランティアで手伝ってもらう。今年3月、4人の女性を任命した。
その一人、有田真佐世さん(37)は「どうして使えないのか、だめなのかなど、正直に伝えている。『これがあったら来る』と感覚で話す」と話した。
こんなこともあった。施設側が、母親向けにディスコ開催の提案をした。
「バブル」ブームに乗った企画を、サポーターは一刀両断にした。
「子供が楽しむのが先。親はその写真を撮りたい」。イベントは子供向けのディスコに変わった。
ダメ出しを浴びる荒瀬氏は「正直、自信をなくすこともあります。自分たちの考えが、けっこう的外れだと痛感させられる」と語った。
それでも、苦言は客のダイレクトな要望だ。施設側はできるだけ早く反映させようと、汗を流す。
客側にとっても、自身がコンサルタントの役割を果たすことで、施設に関与する意識が高まる。改善点など施設の話題を、SNSのママ友ネットワークで情報発信する。これが集客につながっている。
■ネット台頭が脅威
西鉄が運営する商業施設は、福岡・天神のソラリアプラザや、大橋西鉄名店街(福岡市南区)、エマックス・クルメ(福岡県久留米市)など7施設ある。
7施設の平成29年度の売上高は計537億円だった。改装に伴う閉店があったにも関わらず、前年度比2・5%減であり、西鉄は全体として堅調に推移していると分析する。
ただ、急拡大するネット販売が近い将来、売り上げを脅かすことは間違いない。
商業施設を担当する西鉄SC事業部は、平成30年度の重点施策として、天神の機能更新、地域密着型イベントの強化、テナントの人材確保に向けた労務環境改善を挙げた。立地する地域の特性をとらえ、選ばれる施設を目指す。
その中でチャチャタウン小倉は、地域に密着した商業施設の将来像を描こうとしている。
一言コメント
なかなか博多のようにはいかないだろうけど…
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