世界経済、失速の瀬戸際=報復合戦が保護主義助長〔深層探訪〕
- 国際
- 2018年7月15日
【ワシントン時事】世界1、2位の経済大国である米国と中国が6日、互いに制裁関税を発動し、懸念されていた報復合戦が現実になった。事態打開のめどは立たず、各国に貿易保護主義が広がりかねない。成長軌道にある世界経済は失速の瀬戸際に立たされている。
◇異例の狙い撃ち
「貿易戦争では勝者はいない。敗者だけだ」。国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事は、制裁関税で貿易赤字削減を目指すトランプ米政権に警告した。世界の主要国がそろって回復の足取りを強め、IMFは今年と来年の成長率を3.9%と予想する。だが、近く公表される最新見通しは2年ぶりに下方修正される可能性が浮上している。
特定国を狙った報復関税は、鉄鋼などに絞ったこれまでの措置とは別次元だ。影響は米中にとどまらないため、米国に拠点を持つ大手日本メーカー幹部は「多くの中国製品に日本製部品が使われており、打撃は大きい」と不安を隠さない。
日銀が2日発表した全国企業短期経済観測調査(短観)では、大企業製造業の景況感が2期連続で悪化。ドイツでも輸出先行き判断が約3年ぶりに好況から不況に転じ、「貿易戦争」の懸念が投資マインドを萎縮させている。
ロス米商務長官は、鉄鋼とアルミニウムに追加関税を課した際、スープ缶を手にしながら「関税の影響は取るに足りない」と言い切った。だが、欧州連合(EU)が対抗関税で報いたことで、米二輪車大手ハーレーダビッドソンが関税を避けるため生産の一部国外移転を表明。トランプ政権の誤算が表面化する中、減税による経済成長効果がかすむリスクも指摘されている。
◇読めない先行き
世界貿易機関(WTO)のアゼベド事務局長は豪紙への寄稿で、各国の関税が多国間貿易体制ができる前の高い水準になれば、「世界の国内総生産(GDP)の落ち込み幅は2008年の金融危機時を上回る2.4%に達する」と警告した。
さらに、貿易制裁で行き場を失った輸出品が、世界中にあふれる恐れもある。カナダやEUが米国市場から閉め出された鉄鋼の流入を防ぐ緊急輸入制限(セーフガード)を検討し、保護主義には保護主義で応じる兆しが出始めている。
米国は対米投資規制の強化、自動車追加関税も視野に入れ、内向き姿勢をさらに強めている。英エコノミスト誌は「米国は世界経済のけん引車だが、トランプ大統領という危険なドライバーがハンドルを握っている」と警鐘を鳴らしている。
一言コメント
グローバルスタンダードと言っていた頃が懐かしい。
コメントする