はれのひ元社長逮捕1週間 だます意図、立証に壁
- 詐欺・悪徳商法
- 2018年7月2日
今年の成人の日に晴れ着トラブルを起こした振り袖の販売・レンタル業「はれのひ」(横浜市中区、破産)の銀行融資詐取事件で、県警が詐欺容疑で同社元社長を逮捕してから1週間が経過した。容疑を認めており、県警は債務超過の実態を隠すため、粉飾した財務資料を提示する手口で、他にも融資を詐取していたとの見方を強めている。端緒となった晴れ着を着られなかった新成人の被害についても「事件の本丸」(捜査幹部)として慎重に捜査を進める。ただ、融資を引き出すのとは異なり、顧客をだます意図の立証は容易でないとの見方もある。
県警は6月23日、売り上げ約5千万円を架空計上した2015年9月期の決算書類などを示して、横浜市内の銀行から3500万円を詐取したとして、滞在先の米国から帰国した元社長篠崎洋一郎容疑者(55)を逮捕した。実際には債務超過だった事実を隠蔽(いんぺい)する意図があったとみている。融資は新規出店名目だったが、同容疑者は「他の金融機関に借りた金を返すためのものだった」と供述。その後の捜査で、債務超過を隠蔽後、逮捕容疑を含め10の金融機関から約6億円の融資を引き出し、うちおよそ3億円が未返済になっていることも判明した。
「自転車操業」が常態化する一方で、この時期の同容疑者の年収が4500万円に達していたことも明らかになり、被害に遭った新成人の親からは「経営者として最低」「娘のためにせめて十分な刑罰を与えてほしい」との悲痛な思いが口をついて出た。
新成人の被害を立件する上で、複数の捜査関係者は「だます意図をいかに立証するかがポイント」と口をそろえる。
「必死で社員も私も営業をかけていた。そういうつもりは毛頭なかった」。同容疑者は逮捕前、唯一公の場で説明した1月26日の記者会見で、詐欺の認識を問われ、こう否定してみせた。
捜査関係者によると、成人の日間近の昨年12月の段階で、経営に行き詰まった同社は、金融機関と資金繰りの交渉を行ったり、他社への事業譲渡などを持ち掛けたりしていたという。捜査関係者は「一般論として、死に体でも事業継続を模索している形跡があれば、融資の返済は無理でも、サービスの提供はできる場合もある」と指摘。「企業として不誠実であることは免れないが、こうした状況で顧客をだます意図をいかに裏付けるかが鍵」と続けた。
売り上げを水増しした決算資料のような物証も乏しいため、いつの時点で晴れ着の提供ができないと認識したのか、「内心」に迫る捜査も難航が予想される。顧客側が気に入った晴れ着をあらかじめ確保するために前金を支払い、サービス提供との間に時間差が生じる業界の慣行も考慮に入れる必要がある。
高いハードルがそびえるが、捜査関係者は「子を持つ親なら許せない事案。何とかしたいし、そのためにあらゆる手だてを駆使し、捜査を尽くす」と話す。
一言コメント
粉飾を見抜けなかったのなら、銀行にも責任があるでしょう。
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